【ミャンマー】 「統治システムを変える」潜伏議員、将来像は連邦民主制
シートゥーマウン氏インタビュー(下)

  • 2023/3/30

 ミャンマーの国会議員らは、2021年の軍事クーデターにより国軍に追われる身となった。その一人で、今も国境地域に潜伏する国会議員のシートゥーマウン氏に、民主派勢力が目指す将来像について聞いた。
シートゥーマウン氏インタビュー(上)は、こちらからお読みください)

ミャンマーの将来像を語るシートゥーマウン氏(筆者撮影)

「国軍の選挙は恥」

 まず、シートゥーマウン氏は2020年に国民民主連盟(NLD)が圧勝した総選挙について「2020年の選挙が自由で公正だったことを国民は知っている」と指摘。国軍が2023年にも実施をしようとしている次期総選挙について、「軍事クーデターは選挙結果をやり直すことが目的。国軍が行おうとしているのは、恥の選挙だ。国民や国際社会は支持しない」と切り捨てた。

 また、「国軍はこの上ない暴力性をみせている。2017年にはロヒンギャの村々を焼いて虐殺を行った。この件では国際法廷でジェノサイド(民族虐殺)の嫌疑で審理が進んでいるにも関わらず、残虐行為を続けている」と国軍は歴史的に残虐行為を繰り返してきたと批判した。

2020年の総選挙で支持を訴えるシートゥーマウン氏

 民主派が武装闘争に入ったことについては、「私たちは平和的に抗議したが、国軍は容赦ない殺人で応じた。国軍が選挙で選ばれた正統な政府から権力を奪った。だから私たちは戦って抵抗している」と説明している。現在、ミャンマーでは、民主派側の国民統一政府(NUG)傘下の国民防衛隊(PDF)が、ザガイン管区、チン州、カヤー州など各地で国軍と激しい戦闘を繰り広げている。

 シートゥーマウン氏は専門家の調査を引用して「国軍は全国の(330郡区のうち)72郡区しか支配できていない。その72郡区も、都市型ゲリラなどが活動しており、完全には掌握できていない」と主張。そのうえで、「革命を実現するには、武装闘争だけではなく、NUGが国際的に認められることが大切だ。私たちは、軍事と外交のバランスを取ろうとしている」と説明した。

暫定憲法の起草進める

 今後の見通しについてシートゥーマウン氏は、「革命が一歩ずつ進んでいる」としながらも、「いつ革命が終わるかと問うよりも、必要なことを行うべきだ」と話した。国軍による総選挙に代わる混乱の出口として、民主派が掲げる12段階のロードマップを挙げた。

 現在は8段階目の「暫定憲法の起草」の段階にあると説明。シートゥーマウン氏は、この暫定憲法の起草の実務にも関わっている。今後は暫定政府を発足させたうえで、制憲議会や国民投票を通じて、恒久的な憲法の制定を目指す道のりだ。

 また、民主派が政権を樹立した際には、「軍隊は国防のみに従事する」と述べ、軍部の政治への関与を認めない方針を強調。「治安部門改革(SSR)と動員解除・武装解除・社会復帰(DDR)を進める」と話して、軍部や警察の改革を通じてシビリアンコントロールを確立する方針を示した。

質問に答えるシートゥーマウン氏(筆者撮影)

 

 

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