日系マイクロファイナンス機関がラカインに進出
自立への願いを小規模金融に乗せて

  • 2019/7/21

ゼロからの開設準備

 タンタイウーさんはこの日、別の村でさらに2人の顧客候補者の家を訪ねた。木造の簡素な小売店を営み、日用品を売って細々と生計を立てながら息子と娘を育てているティンザーラインさんと、母親や姉と一緒に自宅で仕立て屋を営んでいるニュンニュンティンさんだ。誰の家でも、穏やかな笑顔で話に耳を傾ける姿が印象的だ。

小売店を営むティンザーラインさんと娘。息子は車の修理工として働いている(筆者撮影)

 そんなタンタイウーさんは、10年ほど老舗のPACTで働いた後、当時の先輩であるゾーミンアウンさんに誘われてMJIに移籍した経歴の持ち主だ。ゾーミンアウンさんの読み通り、その穏やかな人柄でスタッフにも慕われ、順調にバゴー支店で勤務していたタンタイウーさんだったが、2年ほど経ったころ、思いがけない話が降って来た。タンドゥエ支店の開設と運営を打診されたのだ。

母親や姉と共に仕立て屋を営むニュンニュンティンさん(左端)

 新しい場所に行ってみたい気持ちはあったものの、難しい情勢下にあるラカイン州でやっていけるのか不安がぬぐえなかったタンタイウーさんは、悩んだ末に、ある交渉に出ることにした。MJIでは通常、支店を新しく開く際、支店長は本社から送るものの、それ以外のスタッフはその地で雇用することになっている。そのルールを重々理解しながらも、「自分以外にもう一人、MJIからタンドゥエにスタッフを派遣してほしい」と掛け合ったのだ。そう口にせずにいられなかったほど、心細かった。

 結果的には、慣例通り一人で着任し、タンドゥエ支店を立ち上げるべく、無我夢中で準備を進めてきたタンタイウーさん。新たに採用したスタッフたちを眺めながら、「彼らがはやく独り立ちできるよう、面倒を見なければ」と話す横顔に、今、不安の色はない。迷いを捨て、覚悟を決めた頼れるボスの姿が、そこにある。

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