【歩く・見る・撮る】― 写真民俗誌/民族誌へのいざない ―
ミャンマー(ビルマ)から ⑬ <仏塔(パゴダ)>

  • 2024/4/25

ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全権を掌握した」と宣言してから3年以上が経過しました。この間、クーデターの動きを予測できなかった反省から、30年にわたり撮りためてきた約17万枚の写真と向き合い、「見えていなかったもの」や外国人取材者としての役割を自問し続けたフォトジャーナリストの宇田有三さんが、記録された人々の営みや街の姿からミャンマーの社会を思考する新たな挑戦を始めました。時空間を超えて歴史をひも解く連載の第13話です。

 ⑬<仏塔(パゴダ)> 

 知り合いのミャンマー(ビルマ)人たちと旅行の話をしていて気づいたことがある。彼ら彼女たちから真っ先に訊ねられる質問に「あのパゴダに参拝しましたか?」ということが多かった。そう、ミャンマー(ビルマ)で旅行と言えば、まずは参拝旅行を指すことが多い。
 上座部仏教であるにもかかわらず、形あるモノを拝むというのは、ちょっと不思議な感じがする。しかしながらビルマ社会では、仏塔を建立して参拝し、自ら進んで喜捨に励む行為こそが、自他共に認める「良き仏教徒」の象徴である。また、一説には、パゴダの「円錐状の優美なその形は、仏陀の僧衣を広げた姿を表している」とも言われている。
 もっとも昨今は、信仰の象徴としてのパゴダというより、観光地のシンボルとして、有名なパゴダを訪問するのが旅行の目的化している部分もある。また、社会の移り変わりと共に、パゴダが建つ地域社会の環境も大きく変わり、特に都市部においては風景の一部としてのパゴダの存在感は弱まっている。ある人の目に映ってきた光景がその人の意識を形作ることに影響を与えているとするなら、パゴダの姿の見えない日常は、ミャンマー(ビルマ)の人の考え方に何らかの形で作用しているのではないだろうか。

 そう、ミャンマー(ビルマ)は、パゴダの国である。国内外問わず有名なのは、最大都市ヤンゴン市内にそびえるシュエダゴン・パゴダと、モン州にあるチャイティーヨ・パゴダ、通称「ゴールデン・ロック」などであろうか。特に、山頂の断崖から今にも落ちそうに見える大きな岩に金箔を貼って7mの仏塔が建立されているゴールデン・ロックは、そのユニークな形状から人びとの信仰を集めており、若いミャンマー人の間では新婚旅行先としても人気だ。
 ビルマ(ミャンマー)国内には、これ以外にも魅力的なパゴダがいくつもある。そのいくつかを紹介したい。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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