農地減少が続くネパールで屋上農園の勧め
地元英字紙が「政策や助成金に頼らず、自らできることを」と呼び掛け

  • 2020/9/9

 都市部への人口集中が続くネパールでは、農地面積が減少の一途をたどり、農業を担う人々の数も減り続けている。食糧問題のみならず、環境問題やメンタルヘルスにも影響がある農業。農業を消滅させないため、8月28日のネパールの英字紙カトマンドゥポストは社説で、「都市部の屋上農園こそが解決の道」との主張を展開している。

農地面積が減少の一途をたどり、農業を担う人々の数も減り続けているネパールで、今、ルーフトップガーデンへの注目が高まっている (c) Gotta Be Worth It / Pexels

持続可能な社会へ

 農業の衰退は、先進工業国のみならず、開発途上にある国々でも深刻な問題となっている。ネパールの現状についても、社説は「都市が拡大して人口が集中するにつれ、農地が消滅している。海外からの輸入に頼る割合が高くなるにつれ、国家財政にも負担がかかってくる」との見方を示した上で、「人口は間違いなく増えており、食糧問題は持続可能な社会の実現に影を落としている」と、表現する。

 その上で社説は次のように述べ、都市部での屋上農園を提案する。

 「都市部の建物の屋上は、何にも使われていないことが多い。その屋上を農地に変えることは、多くの点で画期的なことだ。農業の専門家たちも、屋上農園には良い点がたくさんある、と指摘している」「身体に悪い農薬を用いずオーガニック農業を行うことで、安全な食べ物を食卓に提供できるうえ、そして緑を増やすことで都市部の環境も改善される。さらに、屋上農園は小スペースなので、労働力がなくてもさまざまな野菜を栽培できる」

 世界では、家庭菜園的な簡単な野菜栽培から、水耕栽培や空中栽培といった高度な技術を必要とするものまで、広大な土地を必要としないさまざまな形の農業が実証試験中であり、中には、多くの雇用を創出し、ビジネスとして成功を遂げたものもあるという。

新型コロナウイルスがもたらしたもの

 さらに社説は、新型コロナウイルスの感染拡大が、人々に新しい考え方をもたらしたと指摘する。

 「グーグルが発表したトレンドリポートによれば、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、種子や植物の購入への関心が高まったという。実際、ネパールのソーシャルメディアでも、家庭菜園の様子を伝える内容が多く発信されており、屋上農園は間違いなくトレンドになりつつある」

 ネパールの感染者は8月下旬で約3万6,000人。感染爆発と呼ぶ状況にはいたっていないものの、隣国インドが世界で3番目に多い感染者を抱えていることもあり、以前、警戒体制が続いている。都市封鎖や通行制限などの行動規制を実施する中、「多くのネパール人が「食糧を含む物資の供給が不安定になるのではないかと不安を抱いた」と、社説は指摘する。

 「より多くの人たちが、環境問題や健康問題に関心を持つようになった今、屋上農園はそのニーズに応え得る選択肢だ。都市封鎖されたことも、人々に食糧確保について考えさせるいい機会になった。ネパールの人たちにとって、自家栽培自体は目新しことではないが、今は改めてその意義を見直す好機だと言える」

 その上で社説は、「屋上農園で緑に触れることによって、直接的な食糧増産以上にさまざまな効果がもたらされる」と主張する。「屋上農園は、都市部の美観やエコロジーにも貢献する。植物は水をたくわえ、熱射を防ぎ、ヒートアイランド現象を軽減するからだ。また、家庭で自然に親しむことで、家族のきずなが深まり、子どもたちは植物がどのように育つのか学ぶことがえきる。さらに、自然との触れ合いは私たちの精神衛生上も好ましいことが心理学の研究で明らかにされている。今こそ、積極的に推進すべきだ」

 多額の投資を必要とするわけではない、屋上農園の勧め。コロナ禍をとらえ「今こそ」と訴える社説は、政府の施策や助成金に依存するのではなく、私たちが自ら何ができるのか考える重要さを訴えていて、興味深い。

 

(原文: https://kathmandupost.com/editorial/2020/08/28/green-growth-1598544429)

 

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