地球沸騰時代のアジア 深刻化する熱波による影響
気候変動最前線の南アジアで問われる処方箋

  • 2025/7/31

 世界各地で異例の暑さが続いている。世界気象機関(WMO)によると、2024年の世界平均気温は、産業革命前の水準と比べて1.55度上回った。気候変動対策の国際ルール「パリ協定」で、気温上昇を抑える目標として設定された「1.5度」を、単年で初めて超えたことになる。

NASA地球観測衛星画像が示す、北アフリカ、中東、南アジアの最高地上気温(写真は、2024年6月28日のもの)(c) NASA / wikimediacommons

「自然に基づく都市計画」で街を涼しく

 ネパールの英字紙カトマンドゥ・ポストは6月20日付で「カトマンドゥを再び涼しくする」と題した社説を掲載。盆地である首都カトマンドゥの「都市熱」について考察した。
 かつてカトマンドゥには、緑豊かな田園地帯が広がっていた。しかし、1990年の民主化革命後に急速な都市化が進んだため、首都は「コンクリートジャングル」に変貌。これにより気温が大幅に上昇した。社説によると、カトマンドゥの平均気温は10年ごとに0.38度上昇し、都市の中心部は郊外よりも2度から3度も高い状態が続いている。社説は、この背景にある要因として、「無計画な建設、密集した工業地帯、湿地や森林など自然の熱吸収源の破壊」があると指摘する。
 この暑さは、さまざまな健康被害をもたらす。たとえば、熱中症、下痢、疲労、尿路感染症などに加え、心臓病や糖尿病、メンタルヘルス、喘息などの疾患をも悪化させる、と社説は主張する。こうなれば働く人々の作業効率が低下し、経済状況の悪化を引き起こすことも容易に想像できる。
 一方で社説は、こうした都市熱は「自然に基づく都市計画」によって管理が可能である、とも指摘する。森林や公園、池などが都市にあれば、最大で気温は1.6度下がるという。「都市熱の影響を減らすために取り組まねばならない。樹木の保存、植樹の拡大、自然貯水池の再生などの措置は、驚くべき効果をもたらすだろう」。そのためにはまず、「隣国インドのムンバイやハイデラバードのグリーンイニシアチブをヒントにせよ」と、社説は提言している。

毎週のように異常気象に見舞われる国
 パキスタンでも、熱波の影響は深刻だ。パキスタンの英字紙ドーンは、6月13日付の社説「気候の現実」で、気候変動に対するパキスタンのぜい弱さをとりあげた。
 社説はまず、財務大臣が予算案を発表する会見で気候変動の異常さに触れたことに注目する。「その日、パキスタンはこれまででも屈指の猛暑に見舞われていた。報道陣の前に立った大臣は、『2022年の洪水だけではない。イスラマバードに住む私たちは今、毎週のように、強風や雹(ひょう)などの異常気象に見舞われている。これは、以前はなかったことだ。私たちは気候変動を日々体験している』と語った」
 パキスタンでは6月上旬、一部の地域で気温が50度に達したという。これまでにもパキスタンは、気候変動の深刻な影響を受けてきたが、こうした地球規模の変化を食い止めるには、一国の努力ではどうにもならない。社説は、「協調した行動がとられない場合、さらなる災害が迫っている」と警鐘を鳴らした。

 さらに同紙は、6月25日付の社説で、「危機的状況のアジア」と題し、再び気候変動の影響をとりあげた。
 社説によれば、パキスタンは、アジア全体を襲った「致命的な熱波」のまっただなかに位置しており、春には異常な豪雨、夏には過酷な熱波で苦しんでいる。また、アラビア海ではサイクロンが発生し、北部では氷河の急速な後退にともなう氷河湖決壊洪水の危険性が高まっている。
 国を超えた協力が必要なのはいうまでもないが、パキスタン国内でも、政府全体の緊急対応が不可欠だ、と社説は訴える。さらには、特に都市部における排水システムの改修、農村部では気候変動に適応した農業の推進、地下水層の回復、波の衝撃をやわらげるマングローブの再生に重点を置くべきだ、として、極めて具体的な策を挙げている。
 こうした提言を読むにつけ、パキスタンが直面する気候変動危機がいかに深刻かがひしひしと伝わってくる。

 

(原文)
ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2025/06/20/making-kathmandu-cool-again

パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1919897/asia-on-edge
https://www.dawn.com/news/1916885/climate-realities

 

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