生活必需品の異常な価格上昇 その背景にあるのは?
求められる適切な市場監視のメカニズム

  • 2023/9/17

 世界各地で物価高騰が続いている。新型コロナウイルスの感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻、気候変動などが食料品の価格を引き上げる要因とされる。しかし、各国の事情を見れば、必ずしもそれだけが要因とは限らないようだ。

(c) No Revisions / unsplash

仲介業者による価格の吊り上げを指摘するネパールの社説

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、8月3日付紙面で「生存のための努力」と題した社説を掲載した。

 「ネパールの消費者は、塩、コメ、レンズ豆、食用油、砂糖など、生活に必要不可欠な食料品でさえ高くつくようになり、苦悩している」。社説は、現在の国内の状況について、端的にこう説明する。7月からはインドが非バスマティ米の輸出を禁止したため、平均価格が上昇。砂糖の関税も40%引き上げられ、価格が跳ね上がったという。「人々は食費を払うために医療費や教育費などを削減しなければならない状態だ」

 社説は、国内の業者たちが「価格高騰は世界的なインフレ圧力によるものだ」と説明していると紹介したうえで、ネパール市場の価格高騰は世界的な価格上昇率に比べて「不釣り合いなほど高い」という消費者団体の調査を紹介する。その消費者団体は、ネパールにおける物価上昇について、ロシアによるウクライナ侵攻や降雨量の現象、新型コロナの感染拡大などによって供給量が不足していることだけが原因なのではなく、「そのような口実を利用して価格を吊り上げようとしている国内の業者の存在も見逃せない」と指摘している。

 社説はさらに、政府の監視が行き届いていないことが、仲介業者による価格のつり上げや、闇業者の横行が見逃される原因になっている、とも指摘する。実際、業者が食用油を高値で販売しているのは、政府が価格をコントロールできていないためだという。

 社説は、ネパール政府に対して「問題の深刻さを認識し、市場に介入すべきだ」と主張し、「悪徳業者が弱い立場の消費者から搾取することを許すべきではない」と訴える。そのうえで、「しっかりした市場監視メカニズムの構築や市場価格の分析、経済全体の悪弊対策に取り組むことが求められている」と指摘した。

バングラデシュでも大企業による市場操作の疑惑

 バングラデシュの英字紙デイリースターも、8月13日付けの社説で、生活必需品の価格高騰をとりあげた。

 社説によると、「生活必需品の価格が高騰し、多くの中・低所得者層が経済的苦境に陥っている。政府は対処しようとしているが、卵、鶏肉、タマネギ、ジャガイモなどの価格はコントロールができていない」という。特に、中低所得者層の主なたんぱく源となっている卵と鶏肉の価格の高騰による影響は大きく、卵を買えなかったり、割れた卵を買ったりする人たちも多くいるという。

 バングラデシュ国内の価格高騰について、社説は「食料品価格の高騰については、ウクライナ戦争による燃料価格の高騰などが原因として挙げられているが、不思議なことに、今年に入ってこれらの国際価格が下がっているにもかかわらず、特定の必需品の価格が高騰している」と指摘する。さらに社説は、「養鶏農家が価格を釣り上げているのではなく、大企業が市場を操作しているのではないか」と、疑惑を指摘する。もちろん、洪水によって品不足が起きているという事情もあるだろう。社説は、「いずれにせよ、政府が適切な対策を講じなければ、価格はさらに上昇する恐れがある」「価格操作が行われているという疑惑について徹底的に調査し、取り締まりをすることが必要だ」と主張している。

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 「価格を安定させるために市場の監視メカニズムを強化する対応策が必要だ」というバングラデシュの社説の指摘は、ネパールと共通している。両国とも、生活必需品の価格高騰は、国外の要因だけではなく、国内に解決すべき課題があった、という主張だ。一時的な紛争のみならず、気候変動や感染症といった要因が価格高騰の背景にあるとすれば、この問題は長期化する。適切な市場監視メカニズムを持たない国にとっては、待ったなしの取り組み課題だと言えるだろう。

 

(原文)

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2023/08/03/struggle-to-exist

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/bring-down-prices-eggs-urgently-3393026

 

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