パキスタンのビルが三度目の倒壊事故
地元英字紙が独立の建築物監視機関の設立を提言

  • 2020/9/21

 急速な経済成長により、途上国の都市部は、豊かさという光とともに、さまざまな社会問題という影を抱えるようになっている。その一つが、住宅や建築の問題だ。9月12日のパキスタンの英字紙ドーンは、近年続いて起きている最大都市カラチでの建物の倒壊事故について社説で取り上げ、対策を訴えている。

パキスタンでは建築物の倒壊事故が相次いでいる (c) Aa Dil / Pexels

相次ぐ倒壊事故

 途上国で建築物が倒壊する事故は枚挙にいとまがない。なかでも、2013年にバングラデシュの首都ダッカ近郊でビルが崩落した事故は、大規模な惨劇として記憶に新しい。同年4月、ダッカ近郊の8階建て商業ビル「ラナプラザ」が倒壊し、死者1127人、負傷者2500人を出した。ビルに入居していた縫製工場に置かれていた大型発電機とミシンの振動が共鳴し、建物全体を大きく揺らしたことが原因とされている。また、建物の一部が許可を得ずに増築されていたことも問題視された。

 さらに、ドーン紙の社説によると、パキスタン南部の最大都市カラチでは、今年に入って建築物の倒壊が3回発生しているという。3月に27人が死亡したのに続き、6月には5階建てのビルが倒壊し、22人以上が死亡した。そして今月、カラチの街でまたもやビルが倒壊し、4人が死亡、少なくとも6人が負傷した。

 この地区の建築を管理するシンド州建築管理局は、この建物は違法建築だった上、最近の雨で基盤が弱くなっていたため、築4年しか経っていないにも関わらず倒壊したのではないか、指摘している。

 許可を得ない違法建築と、粗悪な建材や設計図による雑な施工。自然災害や戦争ではなく、建物が突然、倒壊して多くの命を奪う事故には、共通した原因がある。カラチで相次ぐ建築物の倒壊事故も、本来、建築が許可されていない場所に建てたられたり、違法な設計だったりといった複合的な原因が考えられるのだろう。

 しかし社説は、「過去の経験から何も学ばないのならば、なぜ違法な場所に建築をし、土地を売ったのかといくら責めても無駄だ。そのような建物はカラチのいたるところにあり、低品質の建築や違法な建築がまかり通っている」と、指摘した上で、「そうした現実を見れば、こうした悲劇が起きることはまったく驚くべきことではない」と憤る。

悲劇を繰り返さないために

 では、どのような対策をとるべきか。社説は、シンド建築管理局の責任は大きいと指摘し、「今年初め、最高裁はシンド建築管理局の活動が不十分であると指摘し、州政府に改革を迫った」と、伝えた上で、「これは管理局だけの問題ではない」として、問題が一行政組織の改革では解決しないことを指摘している。

 「2000万人近い人口をもつ大都市、規制されていない建築物を整理するのは容易なことではない。歴代の政府は、増加し続ける都市の需要を無視し、住宅危機に対応せず放置したために、違法建築物が次から次へと建ってしまった」

 その上で社説は、「このような悲劇を繰り返さないためにも、政府は、違法建築と建築の品質を監視・管理する独立した機関を設けなくてはならない」と、提案する。

 さらに、社説には記載されていないものの、建築を手掛ける民間セクターにも、仕事に対する倫理観と誇りを持ち、目先の利益だけに踊らされない建築計画としっかりした資金計画でプロジェクトを遂行することが求められている。行政の監視だけでは悲劇はなくならない。

 

(原文: https://www.dawn.com/news/1579216/another-building-collapse)

 

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