粉々になったベイルート
未曾有の爆発事故があぶり出したレバノン危機をパキスタンはどう報じたか

  • 2020/8/14

 8月4日、レバノンの首都ベイルートで大規模な爆発事故が発生した。これまでに200人を超える死者が確認され、さらに100人以上が行方不明になっているという。現地では反政府の抗議デモが起きており、ハサン・ディアブ首相は10日、内閣総辞職を発表した。8月10日付のパキスタンの英字紙ドーンは、社説でこの問題をとり上げている。

レバノンの首都ベイルートでは、先週発生した大規模な爆発事故を受けて市民の間で反政府デモが広がっている (8月11日撮影)(c) AP/アフロ

言葉に尽くせぬ被害

 「壊滅的な爆発被害がレバノンの首都ベイルートを襲った。言葉には尽くせないほどの被害だ」。社説は、約1週間前に起きた衝撃的な事故を冒頭でこう表現した。レバノンにしても、パキスタンにしても、内戦や戦争と必ずしもかけ離れた場所にあるとは言えない国だが、それでもあの爆発は、人々に衝撃を与えた。「爆発の映像は悲惨極まりない。ベイルートは地獄と化したに違いない」

 爆発の原因は、港湾地区の倉庫に長く保管されていた2700キログラムに上る硝酸アンモニウムだった。しかし、事故の背景については、今もさまざまな憶測が飛び交っている。社説は、「イスラエルがシーア派武装組織ヒスボラの武器庫を襲った」などとする見方も紹介しているが、「何が引き金になったのか、明らかなことは何も説明されていない。首相は、管理の怠慢か、外国の干渉によるものだと示唆している」と、述べている。

 爆発事故で住む場所を完全に失ったり、家が破壊されたりした市民は20万人以上に上るという。その多くの人々が、爆発事故を「腐敗した政府の責任」だとして、大規模なデモを起こした。社説は、「レバノンはすでにこの事故の前から、経済危機に陥っており、政府指導部に対する不満が蓄積していた。爆発事故は、いわば、“らくだの背を折るわら”だったと言える」。

 「らくだの背を折るわら」とは、一本ずつはとても軽くても、積み上がれば、最終的にらくだの背を折るほどの重量になるわらの、最後の1本、という意味だ。つまり、レバノンで今、起きている政変は、幾重にも重なった国民の怒りの結果であり、爆発事故が「最後のわら」だったに過ぎない、と、社説は分析する。

幾重にも課せられた試練

 レバノンは、1975年から1990年まで内戦下にあった上、その後も、シリア軍によるレバノン侵攻など、不安定な情勢が続いた。また社説は、最近の不安定要素として、2011年のシリア危機によってシリアからの難民が多く流入したことを挙げている。「こうした事態に加え、レバノンの政治指導者たちは、腐敗や能力不足がゆえに、国を荒波から救い出すことができずにいる」

 その上で社説は、「苦境に陥ったレバノン国民に対し、国際社会が協力して支援をする必要がある」と、主張する。「パキスタンを含む多くの国々が、救援物資などの支援を実施している。だが、長期的には、レバノン国民自身が政治システムを改革し、民主的な国家を作り上げなくてはならない。この長期的な取り組みについては、外国からの救世主に救いを求めることはできないのだから」

 未曽有の爆発事故があぶり出したレバノンの危機。もちろん、ここに新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態も加わっているのが現状だ。社説は、幾重にも課せられた試練に立ち向かうレバノン国民に思いを寄せている。

 

(原文: https://www.dawn.com/news/1573574/beirut-shattered)

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