パキスタンの発展を妨げる気候変動問題
地元英字紙が世銀の報告書を基に「誠意ある行動」を訴え
- 2021/11/27
世界銀行は今年6月、『気候変動行動計画2021~25』を発表し、途上国に対しかつてないレベルの対策資金を提供する方針を明らかにした。この背景には、気候変動が途上国にもたらす影響の深刻さがある。10月31日付のパキスタンの英字紙ドーンは、この問題を社説で採り上げた。
汚職でも能力のなさでもなく
社説は、世界銀行が同報告書で「パキスタンの発展を妨げている最大の要因は、汚職でも、政府の能力の不足でも、あるいは国家の過失でもなく、気候変動にほかならない」と指摘していると報じた上で、気候変動の影響について次のように記している。
「報告書によれば、パキスタンの生活の質は2030年までに4~5%は下落することが見込まれるという。これは主に、地球温暖化に起因する自然災害によるものだ。さらに報告書は、2010年以降、干ばつ、洪水、サイクロン、そして地震による経済損失は140億ドルに上ると算出しており、これが過去15年間にわたってパキスタンで多くの命や資産を奪い、国の発展を妨げてきた最大の要因だと指摘している。これらの自然災害によって、地球温暖化の影響を被ってきたと言える。また、水不足や疫病の発生、食料不足などの危険性が高い地域に住んでいる人は4900万人に上る、とも指摘されている」
急速な都市化がもたらす問題
さらに同報告書では、パキスタンが南アジアで最も早く都市化が進んだ国であるために、却って打撃が大きい、と指摘する。
「無計画な開発、都市に集中する人口、増加するゴミ処理、上水道や下水道などの問題が複合的に絡み合い、気候変動に対して脆弱な国土を作り出している」
さらに2015年から2030年の間に、パキスタンの二酸化炭素排出量が少なくとも3.8倍になるとの試算を引用し、エネルギーセクターの改革を訴える。
「建設、農業、水資源など、パキスタン政府はいまだに古いやり方をなぞっているだけで、国土を危険にさらし、開発を妨げている。気候変動の影響を最小化するために、リップサービスではなく、今すぐ本気で取り組まなければならない。国家の生き残りは、誠意ある行動にかかっている」
環境問題は今や、国の存亡にかかわる主要なテーマになった。感染症と同様に、「国内問題」ではなく、グローバルに取り組まなければならない課題だ。パキスタンの悲鳴は、他国に住む私たちにも、直接、関わっている。
(原文https://www.dawn.com/news/1655035/development-and-climate)