「キングD」の激動の日々をインド紙はどう伝えたか
夕食会で発砲事件が発生 3日後にはイギリス国王の訪問を受け入れ

  • 2026/5/14

 4月25日、アメリカ・ワシントン市内のホテルで開かれていたホワイトハウス記者会主催の夕食会で発砲があり、トランプ大統領やバンス副大統領らが一時退避する事態となった。逮捕された男は、政権の「最高位」から順番に標的にすると記していたとされ、トランプ大統領はこれで3度、命を狙われたことになる。

© Terrance Barksdale /pexels


「社会に内戦前夜の気配」

 トランプ大統領について、これまで皮肉も込めて多くの社説で論じてきたインドの英字紙、タイムズ・オブ・インディアは、4月27日付の社説でこの事件をとりあげた。
 社説は、「幸いなことに、銃撃犯はトランプ氏に手をかけることはできなかった」としたうえで、「憂慮すべきなのは、政治的な暴力がアメリカ社会に広く蔓延しつつあることだ」と、述べる。アメリカでは、これまでに大統領職を務めた42人のうち、10人が直接的な襲撃を受けているという。
 さらに社説は、「アメリカが歴史的に抱えてきた政治的な暴力の遺産と、いま、それを助長している政治的な潮流とは区別して考えるべきだ」と指摘する。独立戦争や南北戦争などを経験してきたアメリカにとって、暴力は歴史の一部とも言える。しかし、現在の暴力は、単なる「歴史的な特徴」として受け止めているわけではなく、強い危機感が広がっている、というのだ。社説は、「個人への暴力が体制的なものとしてとらえられ、対立や二極化が苛烈を極めている」と指摘。そのうえで、現在のアメリカ国内の空気について、「社会には内戦前夜のような気配がある」と、言い切る。
 「実際に暴力が蔓延し、平和が真に壊される前に、制度や文化が再調整できるか――。これこそが、トランプ時代のアメリカにとって最も重要な問いだと言えよう」

不穏な空気を吹き飛ばしたイギリス国王3世のウィット

 襲撃の3日後、イギリス国王チャールズ3世がアメリカを訪れた。アメリカ議会で演説したイギリス国王は、オスカー・ワイルドやディケンズなどの名言を引用したり、自虐的なジョークで議会を沸かせたり、数日前の不穏な空気を吹き飛ばす立ち回りだったという。
 タイムズ・オブ・インディアの社説も、イギリス国王の「活躍」を皮肉を交えて次のように称賛する。
 「国王は、自国イギリスの島国と“キングD”(編集部注:「ドナルド王」の意)の関係を修復するという使命を帯びてアメリカに到着した。タイミングとしては、(暗殺未遂事件によって)少々縁起が良くないものだったが、国王は巧みに練られた演説を携えていた」
 さらに社説は、イギリス国王が単にアメリカ議会を笑わせたのみならず、分断された議会を「一緒に笑わせたのだ—。これは、猫と犬に同じ水飲み鉢を仲良く使わせるぐらい難しい」と指摘する。
 「とりわけ面白いのは、ジョークのような存在の男が、自分自身を笑いのネタにする姿を見ることだ。この点において、イギリス人は実にうまい。自虐的なユーモアの利点は、自分を思わず笑わせてくれた相手を嫌いになることが難しいということだ」
そのうえで社説は、インド人とユーモアとの関係について、「まるでインドの交通事情のようだ――混沌としており、ときに危険だが、たいていは無事に目的地にたどり着く」と表現する。
 果たしてこの社説が、「危険を伴いながらも目的地に着いた」かどうかは図りかねるが、数日前の社説で「内戦の気配がある」とまで表現するほど緊迫した状況のなか、対立する人々にウィットと自虐ネタによって笑いをもたらしたイギリス国王の手腕にある種の敬意を表していることは間違いなさそうだ。


(原文)
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-edit-page/the-bullet-point/

https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-edit-page/held-together-by-haha/

 

 

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