ジャーナリズムにおける女性の苦しみ
「良き女性像」の伝統が根強いパキスタン
- 2019/11/8
多くの国で、ジャーナリズム業界で活躍する女性はいまだ少数派である。パキスタンの英字紙ドーンは、NGOが実施した調査をもとに、女性ジャーナリストをめぐる「オンラインハラスメント」について社説で採り上げた。「オンラインハラスメント」とは、ネット上の攻撃のことで、多くの女性ジャーナリストが「女性ゆえに」、オンラインハラスメントに遭っているという。
95%がハラスメントに
同紙が11月2日に掲載した記事によると、非営利団体Media Matters for Democracyが、パキスタンの女性ジャーナリスト110人を対象にした調査で、95%が「オンラインハラスメント」を経験し、精神的な打撃を受けて仕事にも影響したと答えたという。また、半数以上は、「私生活や個人的な側面がハラスメントの対象となった」と答え、うち3割が暴力などの脅しを受けたという。
さらに、こうしたハラスメントを乗り越えるために、77%の女性ジャーナリストが「発言やメディアでの発信で自発的な抑制をしている」と、答えた。また、法的手段に訴えようと法的機関に相談した女性のうち、約半数が「満足のいく回答を得られなかった」と、答えている。
社説はこの調査を受けて、次のように指摘する。「パキスタンは、ジャーナリストにとって、すでに世界の中でも最も危険な国のひとつになっており、最近の政治状況ゆえに政府の判断や政策に対して公平な批判もしにくくなっている。そうした中で、女性ジャーナリストたちは、ジャーナリストとしての環境の厳しさに加え、伝統的な女性としての役割を求められるという二重の困難に直面しているのだ」
パキスタンの伝統的な「良き女性」像とは、いつでも忍耐強く、決して文句や意見を言わない女性なのだという。社説は、「今回の調査が浮き彫りにしたのは、ジャーナリストという職業でさえ、女性はこうした理想の女性像を押し付けられ、沈黙を強いられている」と、指摘している。
オンラインの恐ろしさ
また社説は、オンラインハラスメントの危険性についても強調する。「オンラインハラスメントは、ツイッターのような各種ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通して容易に拡散されるということを、軽視してはいけない。こうした風潮は可及的速やかになくさないといけない」
社説に引用された調査では、アンケートに加え、9人の女性ジャーナリストに対して詳細なインタビューも行っている。アンケートの中で彼女たちは、ハラスメントを受けたときに頼れるのは「女性たちのネットワーク」だと答えているという。
伝統的な風習や考え方に一人で立ち向かうことには限界がある。こうした社説が、悩みを抱える女性ジャーナリストたちの力になるのなら、メディアとして果たす役割は大きい。
(原文:社説https://www.dawn.com/news/1514592/women-in-journalism
記事:https://www.dawn.com/news/1514358
調査:https://dig.watch/updates/study-online-violence-against-women-journalists)