インドネシアのバドンミントン界がコロナ禍で国際試合を辞退
「喪失感をバネに一層の飛躍を」地元紙が選手たちにエール

  • 2020/10/13

新型コロナウイルスの感染拡大は、社会のあらゆる側面に影響を与えている。インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストが9月15日付で採り上げたのは、スポーツへの影響だ。同国が世界に誇るバドミントン選手たちにもコロナは大きな影響を与えていると社説は指摘する。

イギリスのバーミンガムアリーナで開かれたヨネックス全英選手権の男女混合ダブルスに臨むインドネシアのプラビン・プタバラナクロー選手(左)とメラティ・ダエバ・オクタビアンティ選手(2020年3月15日撮影)(c) PA Images/アフロ)

奪われた機会

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界各地でスポーツに大きな影響が出ている。実際、オリンピック東京大会をはじめ、さまざまな国際試合が中止や延期を余儀なくされているのは周知の通りだ。

インドネシアのバドミントンは世界的に強豪として知られている。なかでも国別対抗の世界選手権である男子のトマスカップと女子のユーバーカップへの参加辞退によって選手や国民が受けたショックは大きかった。

 トマスカップとユーバーカップは今年、10月3日から14日にデンマークで開かれることになっている。もともとは5月に開催される予定だったが、それが8月にいったん延期された後、10月に延期された。しかし、インドネシアチームは今年、「選手の安全」を理由に両カップに参加しないことを決めたのだ。

 「かつてインドネシアに栄誉をもたらした両大会への出場を断念したことは、スポーツ界全体に暗い影を落とした。そんな中、インドネシアが9月9日にスポーツの日を祝ったのは皮肉な話であったものの、オンライン上ながら国を挙げて開催されたこのイベントは、インドネシアのスポーツ界に再び活力を取り戻そうという願いが込められたものだった」との見方を社説は示す。

 さらに社説は、インドネシア政府が「スポーツ科学、スポーツ・ツーリズム、スポーツ産業」という言葉を掲げ、「優秀なスポーツ人材がその活躍の場を広げ、多くの人々の関心を集め、スポーツに関する産業を振興することを目指している」と、指摘する。選手が自身の活躍の場を広げることで関連産業が育成され、より多くの人々がスポーツに関心を抱くようになり、強い選手が輩出されるという好循環を生み出すことが狙いだ。

 その上で社説は、「こうした好循環を作り出すためには、インドネシアから国際水準のスポーツ選手を数多く輩出することが必要だ」「これまでトマスカップで13回、ユーバーカップで3回の優勝を誇るインドネシアのバドミントンチームが国威の発揚に欠かせない存在だ」と訴える。

 「インドネシアは2002年以降、決勝に残りながらも優勝を逃し続けてきた。2016年にはデンマークに敗れ準優勝、2018年には第3位に甘んじた。その意味で2020年大会には優勝という大きな期待が寄せられていた」

より良いアフターコロナへ

 とはいえ、社説は今回の決定を批判しているわけではない。

 「インドネシアのバドミントン協会は、選手たちの健康と安全を優先して大会への不参加を決めた。感染拡大がいつ収束するかだれも予測ができない今日、この決断は正しいだろう。実際、デンマークは現在、インドネシアを含む59カ国からの渡航を禁止している。これは、私たちが感染拡大を抑制できていないためにほかならない」

 コロナ禍という特殊な状況を受け、今回の国際試合への参加を辞退する国は他にもあるという。

 「インドネシアのほか、韓国やタイ、台湾、オーストラリア、ロシアも、今年のトマスカップとユーバーカップに参加しないことを決めた。日本と中国も、選手名簿はまだ提出していない。もし、これ以上、シードチームの参加辞退が増えるようであれば、国際バドミントン連盟は再度、この国際試合を延期せざるを得ないだろう」

 厳しい状況にあるのはインドネシアだけではない。落胆は大きいが、社説は最後に「より良いアフターコロナ」への期待を示す。

 「インドネシアの選手たちは、国際試合でその実力を世界に示す機会を奪われた。彼らはおそらく、今年いっぱいはどの試合にも参加できないだろう。その意味では、インドネシアのバドミントンチームは新型コロナウイルスに屈したと言える。しかし、彼らは来年、必ずやもっと強くなって戻ってくるはずだ。そのためには、私たちが新型コロナウイルスを克服しなければならない」

 今回の決定は、決して選手たちの敗北ではない。この時代を「生き抜く」ことは、むしろコロナ禍への勝利だ。世界中のアスリートたちが、喪失感を乗り越えるたくましさを備えていることを祈らずにいられない。 

 

(原文: https://www.thejakartapost.com/academia/2020/09/15/big-loss-for-badminton.html)

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