男女平等からほど遠いアジア各国の現状
「グローバル・ジェンダーギャップ報告書」が明らかにしたもの
- 2023/7/20
世界経済フォーラムが男女格差の現状を国別で評価した「グローバル・ジェンダーギャップ報告書」の2023年度版が、6月21日に公表された。日本は146カ国中125位で、前年の116位からさらに順位を下げ、この調査が公表を開始した2006年以降で最低の順位となった。1位は14年連続でアイスランドだった。
報告書は、各国のデータを基に、男女格差を「経済」、「教育」、「健康」、「政治」の4分野で評価。0から1の数値で格差を指数化している。「経済」は、男女の労働参加率や賃金格差などを指標としている。「教育」は識字率や教育水準の男女比など、「健康」は健康寿命の男女比など、そして「政治」は国会議員や閣僚における男女の割合などが、それぞれ指数とされている。2023年の世界全体のスコアは0.684と、前回よりわずかに改善された。日本のスコアはそれを下回る0.647で、1位のアイスランドの0.912とは大きな差がある。アジアでは、フィリピンが0.791で世界16位と最も高く、中位にはシンガポール(49位)、ベトナム(72位)、タイ(74位)などがつけている。
ジェンダー平等の最下層国、パキスタンの内情
一方、アジアの中で最下位グループにいるのが、パキスタンだ。アルジェリア、チャド、イラン、アフガニスタンよりは上回ったものの、146カ国中142位と、ワースト5に位置している。
同国の英字紙ドーンは6月26日付の紙面に「ギャップに注意しろ」と題した社説を掲載し、格差縮小への取り組みを訴えた。
社説は、同国の順位が前年の145位から142位へと改善したことについて、「向上したことを喜ぶのは時期尚早であり、むしろ自己認識が欠如していることを示していると受け止めるべきだ。サブ指数の結果は非常に悪く、ジェンダー平等への道のりはまだまだ遠い」と、厳しい見方を示した。
社説によれば、パキスタンは「経済」における男女格差指数が5.1ポイント上昇し、順位の向上に貢献した。また、女性技術労働者の割合や賃金格差も改善されている。他方、依然としてギャップが大きいのが「政治」で、政党や政府の意思決定ポストに就いている女性はごくわずかだという。
「ほとんどの政党は、選挙の際に候補者の5%は女性を擁立するという必須条件を満たしていない。また、女性の議席は男性国会議員の親族である女性に与えられるものだとみなされている。これでは、政治的なエンパワメントは一部のエリート層に限定され、国全体の女性へのエンパワメントに全くつながらない」
さらに社説は、女性への暴力についても言及し、「男女平等を革新的に前進させるためには、まず女性が暴力から守られ、人生の重要な決断を下す主体性を持たなければならない」と、指摘した。パキスタンでは、女性に対する暴力事件が後を絶たない。ある報告書によれば、南部のシンド州で今年1月から4月の間に起きた女性に対する暴力事件は771件に上っている。
女性への偏見克服のカギは「エンパワメント」
東南アジアでは経済先進国の一つでもあるマレーシアも、ジェンダーギャップ報告書における世界ランキングは芳しくなく、昨年より順位を一つ上げたものの、102位にとどまっている。
マレーシアの英字紙スターは、6月26日付の解説記事で、「ジェンダーに基づく偏見は、文化、経済、政治、社会制度に根強く残っている。こうした偏見と闘うための重要な一歩は、女性のエンパワメントを推進することだ」と、指摘した。
では、エンパワメントとは何か。記事は、「女性のエンパワメントとは、女性自身が自分の人生を管理し、意思決定に参加し、男性と平等に機会を得ること」だと説明し、「女性のエンパワメントこそが、国家の成長をより強固で持続的にするものであり、女性のみならず国家にとっての重要課題である」と主張した。
(原文)
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1761753/mind-the-gap
マレーシア: