教授言語を英語からウルドゥー語へ
多言語国家の悩み深いパキスタン
- 2019/9/4
パキスタンのパンジャブ州政府はこのほど、2020年3月以降に州内の小学校で使う教授言語を英語からウルドゥー語に変えることを発表した。これは、10年ほど前に当時のシェバーズ・シャリーフ州知事が導入した英語を教授言語とするシステムを変更するものだ。
パキスタンは、ウルドゥー語を国語とし、英語を公用語としているが、主要言語として、パンジャブ語、パシュトー語、シンド語など6言語があり、さらに少数民族が話す数十の言語がある。
パキスタンの英字紙「ドーン」の社説は、今回のパンジャブ州の判断のもとになった住民調査を引用しながら、多言語国家が共通語を持つことの難しさを指摘している。
多数がウルドゥー語への移行を希望
社説によると、小学校における教授言語を英語からウルドゥー語に変えることについてのアンケート調査はパンジャブ州内22地区で実施され、すべての地区でウルドゥー語への移行が賛成多だったという。中でも、教育の専門家たちは、子どもたちが幼いうちから母語以外の国語または外国語による理解を強制することによって、理解力や認識力の発達が阻害される恐れがあることを挙げ、ウルドゥー語への移行を支持しているという。
ただ、ここで問題なのは「国語」とは何かということだ、と社説は問題提起する。
この調査は、教師にとっても生徒にとっても「母語」がウルドゥー語である、という前提に基づいている。明らかな「外国語」である英語と対比して考えるために、ウルドゥー語が彼らの共通言語である前提に立った方が簡単であるためだ。