パキスタンのカーン首相「任期5年は短い」
民主主義を無視した発言を地元紙が批判

  • 2021/2/23

 パキスタンのイムラン・カーン首相がこのほど「5年の任期は、政策を実現するにはあまりに短く、悲劇的だ」と発言し、波紋を呼んでいる。1月31日付のパキスタンの英字紙ドーンは、社説でこの問題を採り上げた。

第74回国連総会でスピーチするパキスタンのカーン首相 ©ロイター/アフロ

中国がお手本?

 社説によれば、カーン首相はあるイベントで演説に立ち、「現状は5年おきに選挙を実施し、勝利しなければならない。この5年というサイクルは、政府が長期計画を策定する上で最大の障害となっており、悲劇だ。中国のような長期政権が望ましい」という趣旨の発言をしたという。
 これについて、社説は「真の問題は5年の任期ではない」と反論し、次のように述べる。
 「首相は政権運営上の問題の原因が5年の任期だと判断しているが、選挙について批判することは全くの的外れだ。パキスタンは、歴史上、長期政権も経験している。もし任期の短さだけが国家の発展を阻害する最大の要因であるなら、パキスタンは今日のような状態には陥っていないはずだ。われわれの真の問題は、政治的安定性が欠如していることと、レジティマシーを欠いた政権が政治を担ったことだ。この2つの脅威こそが、パキスタンの政治構造を混乱させている」
 さらに社説は、「カーン首相が中国を安定政権の手本として偶像化している」との見方を示し、首相の発言について「パキスタンが憲法にのっとった民主国家であり、国民の総意に基づき統治されるべき国だということを忘れてはならない」と、厳しく批判。その上で、「悲劇なのは、5年という選挙サイクルではない。それを維持できないことだ」とも指摘する。
 パキスタンは1947年の独立以来、クーデターをたびたび経験してきた。
 「首相は、政権の継続性の短さが政策実施の妨げとなっているというが、独立後の約70年を振り返ると、5年の任期を全うすることができた政権は多くはない。継続性を問題視するのであれば、5年の任期さえ全うできない権力者の方に問題があるのではないか」と、社説は問いかける。

「まずは公正かつ定期的な選挙を」
 さらに社説は、「継続性のある政権運営を求めるならば、自由で公正で透明性の高い選挙を定期的に実施することが最も重要だ」と、指摘する。
 「民主的な選挙によって、安定性やレジティマシーが政治システムに織り込まれる。この仕組みが定着し、政府が国民に信頼されるパフォーマンスを発揮すれば、国民は次の5年も同じリーダーに任せようと投票するだろうし、それこそがカーン首相が求めていることだろう」「こうした政権のもとで実施された政策は、たとえ政権が交代しても、基本的な部分は引き継がれるはずだ。さまざまな政党の間でひとたび基本合意にいたった政策は、政権が変わっても継続性が担保されるものだ」
 政権が長ければ壮大な計画が実現する、という単純な話ではない。カーン首相の発言は、民主主義の原則を無視したあまりに稚拙な考えだったようだ。

 

(原文: https://www.dawn.com/news//1604629)

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