オミクロン株広がるパキスタンがワクチン接種を呼びかけ
地元英字紙が感染者の急増を強く懸念

  • 2022/2/17

 新型コロナウイルスのオミクロン株が世界中で猛威をふるっている。パキスタンでも急激な感染者増が起きている。1月31日付けのパキスタンの英字紙ドーンは、この問題を社説で採り上げた。

(c) usama tayyab / Unsplash

低い警戒心

 社説によると、パキスタン国内でのオミクロン株による新規感染者は1日で8000人を超えるようになっており、これまでに10万人以上が感染したという。
社説は、「検査態勢は不十分で、実際に感染している人の数は、確認されているよりもずっと多いのではないか」との見方を示した上で、「1日あたりの新規感染者数は約7万人と、感染拡大が始まって以来、最多となっており、オミクロン株の感染の速さが分かる」と指摘。「カラチやハイデラバードなどの大都市ではレストランでの飲食が禁じられているが、そのほかの多くの都市では今も普段通りの生活が続いている」として、警戒心の低さにも疑問を投げかけた。

進まないブースター接種

 社説によれば、パキスタン国内では2億2000万人のうち8070万人が2回のワクチン接種を終えたが、3回目のブースター接種を終えたのは220万人にとどまっているという。また、2回のワクチンでもオミクロン株の感染予防にある程度は役立つものの、免疫をつけるにはブースター接種が必要だと報じている。
 そんな、パキスタンの最大都市カラチのワクチン接種センターで、スタッフらが賃金不払いに抗議してストライキを行っており、現在、ワクチン接種が中止されているという。社説は、「賃金不払いとミスマネジメントによって、重要な時期にワクチン接種業務が滞るという最悪の事態を招いてしまった」と、深い懸念を示す。
 「アジア、欧州、米国などで、オミクロン株よりもさらに感染力が強い亜種が見つかったと報じられており、パキスタンのようにワクチンの未接種者が多い国にとってさらなる脅威となる可能性が高い。政府は今後の新たな変異株の脅威も十分に踏まえつつ、ワクチン接種が早く進むようにしなければならない」
 重症化する率が低いといった理由から、オミクロン株への警戒心がゆるんだり、ブースター接種が進まなかったりという状況は、日本ともよく似ている。他方、経済活動を止めないためには、新たな変異株の特性に応じた柔軟な姿勢も必要だろう。いずれにせよ、ワクチンの有効性は否定されるところではない。ワクチン接種を急ぐべきだという社説の主張は、どの国にとっても「今できる最善策」だと言えよう。

 

(原文https://www.dawn.com/news/1672432/rampant-virus)

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