新型コロナとの「闘い」続くシンガポール
クラスター発生で5万人の感染者を出した都市国家の挑戦
- 2020/8/11
新型コロナウイルスの感染者が5万人を超えたシンガポール。しかし、6月に入ってからは部分的都市封鎖「サーキットブレーカー」を解除し、経済・社会活動が再開されている。シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、7月23日の社説で「ウィズコロナ」の段階にはいったシンガポールの今後について論じている。
感染抑制の3側面
社説は、シンガポールでは新型コロナウイルス対策が3つの側面で進行している、と分析する。
第一に、外国人労働者用の寮だ。社説によれば、シンガポールの感染者の実に94%が低熟練外国人労働者たちだという。彼らは外国人労働者専用の寮で生活しており、そこがクラスター化して感染が一気に広がった。そこでシンガポール政府は、外国人労働者30万人以上に対して新型コロナウイルスのPCR検査や抗体検査を開始した。8月中旬には終了する見込みだという。
「外国人労働者が共同生活している寮で感染拡大を抑制するのは多大な労力を要するが、クラスター発生したこのような寮で抑制に成功し、外国人労働者を職場に戻すことができれば、公衆衛生上も、経済上も大きな成果となるのは間違いない。それが実現に近づきつつある」と、社説は取り組みを評価する。
第二に、国外からの感染の持ち込みを防ぐための水際防疫だ。社説は、「国境の防疫は最大の戦場とまでは言えないものの、十分に気を付ける必要がある。世界の状況はいまだ深刻で、一度は抑え込みに成功したとみられていた国々でも、感染が再び拡大しつつある。こうした現状を踏まえ、海外には当面、旅行しないことが望ましい。オーストラリアのビクトリアをはじめ、日本や香港などについては、トランジットを含むすべての旅行者の行動制限を厳格化するといった策を検討すべきだ」と、主張する。
予防対策の継続を
第三に、市中感染の予防だ。社説は「シンガポールの新型コロナ対策にとって、市中感染の抑止は重要な戦略だ」と、指摘する。シンガポールでは、急性肺炎の症状がある人々への検査を徹底的に実施している。「これは新規感染者を見つけ出すための有効な方策であり、市中感染を早期に察知する方法だと言える。幸い、新規感染者は今のところ少ない」
こうした3つの側面で感染を抑制するシンガポールだが、社説は「今後は、成果を上げつつあるこれらの対策をどう継続的に実施していくかが課題となる」と指摘した上で、次のように訴える。「それは、シンガポール国民の肩にかかっている。最悪の闘いを終えた後は、誰でも気持ちを緩めたいという誘惑にかられるだろう。行動制限が解除され、自由に行動できるようになっていればなおさらだ。仕事場でも地域社会でも、行動制限を守らせていた恐怖心が薄らぎつつある。ようやく新たな平和が訪れたと考えているかもしれないが、新型コロナウイルスとの闘いは終わってなどいない。われわれは感染抑制のために予防を継続しなければならない」
シンガポールは、小さな都市国家として、外国とかかわらざるを得ない。人とモノの往来が止まれば、それはこの国の息の根を止めることになる。だからこそ、「ウィズコロナ」への覚悟は深いはずだ。
(原文:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/the-coronavirus-fight-is-far-from-over)