航空業界の起死回生に名乗り出たシンガポール
「トラベルバブル」で世界の拠点空港としての地位を守れ

  • 2020/10/21

 新型コロナウイルスの感染拡大が抑えられていることや、同等水準の感染対策を施行していることなどを条件に、相互の国の旅行者を受け入れる「トラブルバブル」が少しずつ始まっている。感染対策が同じ水準にあることを「バブル=泡」と表現し、同じ泡の中にあると考えられる国同士の往来を認めることで、低迷する旅行業界や経済そのものを押し上げようという試みだ。10月10日付のシンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、社説でこの問題を採り上げた。

シンガポールのトラベルバブル政策で航空業界の起死回生なるか (c)Yangki Suara / Unsplash

感染前の数パーセントに落ち込んだ空港利用

 社説は、「シンガポールは、同じ水準で感染対策を行っている国々とトラベルバブルについて協議を開始する用意がある。今週初めに国会で議論されたこの政策は、国境を再開し、制限付きではあるものの通常の旅行を許可することで、ひん死の状態にあるシンガポール国際空港を世界の拠点空港として再生することを後押しするものだ」と、報じている。

 統計によると、シンガポール航空業界のひっ迫した状況と対策の緊急性は明らかだ。新型コロナウイルスの感染拡大前に比べると、チャンギ空港の利用客は通常のわずか1.5%、離着陸する旅客機は6%に落ち込んでいる。直行便が就航している都市も、160都市から49都市に激減した。国際便の利用客も、以前は世界で7番目に多かったが、現在は58位だ。

 「シンガポール航空はかろうじて存続しているが、昨今、大幅に人員を削減したにもかかわらず、経営危機に直面している状況は変わらない」

カギ握る空港での検査

 さらに社説は、「新型コロナウイルスによって、国際的な拠点空港としての強みを持っていたチャンギ空港の弱さが露呈した」と、指摘する。「現状のままでは維持できない。大胆でイノベーティブな対策が必要だ。シンガポールが、世界の航空業界の再生の先駆者となるような画期的な対策が必要だ」

 トラベルバブルのカギを握っているのは「水際での感染検査」だと社説は指摘する。シンガポールのトラベルバブルについては、すべての旅行者は空港で新型コロナウイルスの検査を受けた後、隔離や旅程の拘束は求められない。今後数カ月以内に、チャンギ空港内に専門の検査施設も設置される予定だ。

 「この対策に込められたメッセージは明確だ。シンガポールは、航空業界の再生に向けて素早く動き、世界の拠点空港としての地位を回復すると同時に、新型コロナ感染を抑制し、安全を確保するということだ。半年前に国境封鎖に踏み切った時と比べると、感染状況はおおむね抑制されつつあり、この政策は十分に可能だ」

 社説は、国内の感染状況について楽観的な見通しを示した上で、「今こそ世界に先駆けて航空業界の回復に乗り出すべきだ」と主張する。

 「シンガポールが迅速に空の旅の回復に取り組むことで、国境封鎖をどのように解除し、経済を再生していくかという見本を世界に示すことになるだろう」

 小さな国の巨大なハブ空港が、どのように息を吹き返すのか。世界が注目している。

 

(原文: https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/safeguarding-spores-air-hub-status)

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