スリランカの社説がワクチンの接種を議論
エッセンシャルワーカーを優先し、感染リスクの低減を

  • 2021/1/22

 新型コロナの感染拡大が始まってから1年が経過した。世界各地が感染の第二波、第三波に見舞われる中、ワクチンの開発が急がれ、接種が始まっている。まだ入手していない国々も多いが、そうした国でもその入手経路や接種の方法について議論が始まっている。2021年1月15日付のスリランカの英字紙デイリーニューズは社説でこの問題を採り上げた。

Alena Shekhovtcova / Pexels

ワクチンに関心高く

 スリランカでは1月半ばまでに5万2,000人以上が感染し、死者は256人にのぼっている。昨年9月ごろまでは感染者をほぼ抑えこんでいたが、10月以降はクラスター感染が発生するなどして感染者数が急増した。1月現在は下降傾向にあるものの、今も1日あたり700人前後の新規感染者が出ている状態だ。

 新型コロナについて、社説は世界の関心は今、「ワクチン」にあると指摘し、「新型コロナウイルスはたった1年で920万人が感染し、200万人の命をうばった。実験が繰り返され、高価な医薬品も試されているが、治療の決め手は見つかっていないため、ワクチンに期待が集まっている」と述べる。

 これまでワクチン接種によって根絶に成功した病気の例として、社説は1977年に根絶された天然痘や、一部の国を除き根絶されつつあるポリオを挙げる。

 一方、エボラ出血熱を引き起こすエボラウイルスは、ワクチンが開発されるまでに4年の歳月を要したことについては、エボラ出血熱の感染拡大がアフリカの一部地域に限られていたためだと指摘し、新型コロナについて「裕福な国々を含む世界中の国々が影響を受けており、ワクチン開発が世界のすべての国にとって喫緊の課題であることは明白だ」と述べている。

 さらに社説は、ワクチンの開発状況について次のように説明する。

 「このニーズに応え研究者や製薬会社が開発を急いだ結果、1年経たずしてドイツのビオンテック社と米国のファイザー社が開発したワクチンと、米国のモデルナ社が開発したワクチンの2種類が完成した。これ以外にも、オックスフォード大学とアストラゼネカ社(英国/スウェーデン)、バーラト・バイオテック(インド)、シノファーム(中国)、ガマレヤ研究所(ロシア)などが開発したワクチンが次々と承認や緊急使用許可を受けており、スリランカをはじめ各国でワクチンの入手方法に関する協議が始まっている」

 その上で、次なる関心事は「誰が最初に接種を受けるか」だ、と社説は指摘する。

 「コロナとの闘いの最前線にいる医療関係者が優先的に接種されることには議論の余地がない。彼らはほぼ毎日、新型コロナの感染者や濃厚接触者らと接触するのだから、守られなければならない。そして、治安関係者や警察官らの保護も必要だ。免疫力が低いと言われる70歳以上の高齢者や、非感染症の持病を持つ人たちも優先されるべきだろう」

コロナ禍の暮らしを支える人々

 さらに社説は、ワクチン接種を優先的に受けるべき人を考える際、医療関係者や治安関係者だけでなく、「生活を支えてくれている人たちを忘れてはいけない」と、主張する。 

 「ワクチン接種について議論する際、忘れてはならない人たちがいる。感染拡大抑制のために経済活動が大幅に制限される中ででも私たちの生活を支え続けてくれているエッセンシャルワーカーの人々だ。公務員をはじめ、クリニックに行くことができない患者のために医薬品を玄関口まで配達してくれる郵便配達員、列車やバスなど公共交通機関の従業員たちだ。国によっては、スーパーマーケットや薬局、食品店の従業員らもワクチンの優先接種の対象者に入っている」

 さらに、次のように続ける。

 「政府は、ロックダウン期間中も食料を確保するために農業の継続を許可した。私たちがロックダウンの間も生き延びることができたのは、農家の人々のおかげでもあることを忘れてはならない。また、入国規制の緩和にあたっては、空港職員や旅行関係者たちも新型コロナへの耐性を持っていなければならない。政府はすべての入国者に対してPCR検査の受診と陰性証明書の提出を求めているが、それがあるからと言って、新型コロナに絶対感染しないわけではない」

 経済活動が制限され、「動けない、何もできない」と嘆く人々が多いが、こうして暮らしを振り返ってみると、我々の生活がいかに多くの人たちの仕事によって支えられているかが分かる。感染のリスクを承知でそうした仕事に取り組んでいる人たちに、真っ先に安全・安心が届けられるように。そして、それが世界中どの国においても同じように配慮されることを願いたい。

 

(原文: http://www.dailynews.lk/2021/01/15/editorial/238830/think-them-too)

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