スリランカの社説がIOCの体質を強烈に批判
東京五輪とパラリンピックを機に五輪の在り方を巡る議論高まる

  • 2021/8/8

 東京五輪の開催について、スリランカの英字紙デイリーニューズは7月23日付の社説で採り上げた。五輪開催の莫大な費用に言及し、国際オリンピック委員会(IOC)の体質や開催地の固定案について言及し、考察している。

東京五輪とパラリンピックの開催を巡り、五輪の在り方に関する議論が高まっている © Ryunosuke Kikuno / Unsplash

「マネー」が開催強行の理由か

 社説はまず、オリンピックについて説明する。多くの途上国では、五輪に参加できる選手数は限定的で、一般的に日本ほど人々の関心が高くないことが背景にある。
 「東京五輪は、2011年に発生した東日本大震災からの復興と、このたびの新型コロナの感染拡大からの回復を掲げて開かれた。東京で五輪大会が開催されるのは、1964年以来、二度目のことだ。今年、東京には200カ国以上から1万1000人あまりの選手が集まり、5つの新競技を含む40競技が日本全国42カ所で開催され、合計2000以上の金銀銅メダルが授与される。これらのメダルはリサイクル金属で製造され、環境にやさしい五輪大会を演出していることは興味深い。この大会にスリランカは5人の選手を送り出した」
 社説は、東京五輪の開催が1年延期されたことについて、「五輪大会の延期は史上初めてのことだった。理由は、もちろん新型コロナのパンデミックだ。世界がロックダウン下にあった1年前には開催は不可能で、延期以外の道はなかった」としながらも、「しかし、それでは、なぜ東京五輪が次の2024年のパリ大会へとバトンをつなぎ、キャンセルされなかったのか、不思議に思う人はいるだろう」と、疑問を呈した。
 そして、その理由として、「そこに絡むのは、例のごとくマネーだ」と指摘する。
 「最終的には開催を決定したのは、開催都市である東京というより、IOCだ。莫大な五輪大会の放映権料を考えれば、IOCに選択の余地はなく、開催しない選択肢はなかった。しかし、今も新型コロナ感染拡大の緊急宣言下にある東京都民の多くは、これが正しい選択だったのか疑問に思っている。日本国民の80%近くが、今年の五輪開催に反対だったということも、不思議ではない。もし日本が、自らの復興や前進を世界に知らしめたいのだとしたら、今は大変タイミングが悪いと言わざるを得ない」
 とはいえ、大会は開催された。社説によれば、選手と、8万人以上の関係者たちはワクチン接種を受け、PCR検査を何度も受け、すでに選手や関係者のうち何人かは陽性と判明した。彼らは、隔離されたり、日本を去ったりしなくてはならない。社説は「今年は新型コロナ対策が何よりも優先順位が高く、通常は最大の懸念とされるテロ対策も影が薄い」と、指摘する。

巡回開催や固定開催も

 社説はさらに、「こうして4年ごとに開催都市を変えることに、莫大な出費をかける価値があるのだろうか」と疑問を投げかけ、「必要経費があまりに莫大であるがゆえに、アジアやアフリカでは2カ所でしか開催されていない」と、指摘する。
 「五輪の開催都市に立候補する都市は、年々減っている。2032年の五輪大会に立候補してる都市は、事実上、ブリスベンだけだ。IOCは腐敗組織だというイメージが広がってしまい、開催都市となるために賄賂が渡されているという疑惑がある。東京でさえ、その疑いから逃れてはいない」
 「こうした問題を回避するために、開催都市を1カ所、あるいは施設の整った数都市を巡回する形にしてはどうか、という案が浮上している。そうすれば、現存の施設を使えるため、都度、新たに新設せずにすみ、コストを削減できる。実際、古代、近代五輪の発祥の地であるギリシャのアテネでの開催には多くの人々が賛成している」
 東京五輪とパラリンピックの開催をめぐり、世界中が「五輪大会、そしてIOCの在り方」について再検討を始めた。無事に終わればいいということでは済まされない。開催国日本の国民として、責任ある議論を続けていきたい。 

 

(原文http://www.dailynews.lk/2021/07/23/editorial/254670/faster-higher-stronger)

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