フェイスブックの投稿規定問題の行方
「受け手側も見極める目を」スリランカの社説が訴え
- 2020/6/30
アメリカで吹き荒れる人種差別への抗議行動はまたたく間に世界中に広がり、その影響はビジネスの分野にも及んでいる。6月下旬には、ユニリーバやコカ・コーラなど有名ブランドが相次いでフェイスブックの広告をボイコット。差別的な発言や行動に対する規制がゆるいとして、フェイスブックの管理を批判した。6月29日付のスリランカの英字紙デイリーニューズの社説では、この問題をとりあげている。
5Gがコロナを広める?
「第5世代移動通信システム(5G)の基地局が、新型コロナウイルスの感染を拡大させている――。こんなバカげた情報がフェイスブックに掲載され拡散された。新聞や他メディアであれば、簡単にファクトチェックができるレベルの情報だったにも関わらず、だ」。この日の社説は、こんな書きだしだった。スリランカで最近、このような情報が出回ったようだ。「しかし、フェイスブックはこのような有害で誤った情報を掲載し、何十億もの人々がそれを目にしている」と、社説は怒りをあらわにする。
フェイスブックは、2000年代初頭に友人たちをつなぐメディアとして誕生。みるみるうちに巨大化した。社説は、「マーク・ザッカーバーグCEOに率いられたフェイスブックは、フェイクニュース、誤報、そしてヘイトスピーチがサイト上に広がっていくのを、少なからず看過した」と、厳しい見方を示す。その背景には、スリランカでフェイスブックが大きな社会事件を引き起こした例があるためだ。
2019年4月、スリランカ国内でキリスト教の教会や高級ホテルを標的とした連続爆発テロが起き、250人余りが死亡し、過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を発表した。事件をきっかけに、フェイスブックを含むソーシャルネットワークサービス(SNS)上では誤った情報が流れ、攻撃し合うような書き込みも多く発生した。キリスト教徒の多い街では、モスクやイスラム系の店舗が襲撃される事件も起きた。その多くがSNSを発端にしたとみられたことから、フェイスブックは「ヘイトスピーチを削除できなかったことを遺憾に思う」とのコメントを発表した、と社説は伝えている。
SNSのプラットフォーム化
その後も、フェイスブックにはさまざまなスキャンダルがつきまとう。その極みがアメリカで白人警察官に殺害されたジョージ・フロイド氏の事件だ、と社説は指摘する。「この事件により、フェイスブックを含むSNS全体が、ヘイトスピーチにどう向き合うか判断を迫られた」。
この流れを受けて、世界的に有名な企業が次々と「ヘイトで利益を得るな」というスローガンを掲げ、フェイスブック上での広告をボイコットしている。彼らが要求しているのは、人種や宗教問題に関連する、偏見が含まれたヘイトスピーチや誤報に対する対応の厳格化だ。これに対し、フェイスブック側は、ヘイトスピーチや暴力的表現への規制を強めるといった措置を取り始めている。また、フェイスブック以外にも、グーグルやアマゾンなどが人気を集めるSNSを保有しているため、「サービスを分割すべき」と指摘する声も出ているという。
もっとも、社説は「すべてのヘイトスピーチやフェイクニュースが、それを掲載している媒体の責任というわけではない」とも指摘する。「フェイスブックやツイッターなどを見る時には、書かれていることが本当か、それが特定グループの人々を攻撃したり不利益になったり問題を起こしたりしないか、受け手側は見極める必要がある。少しでもそうした可能性があると思うならば拡散すべきではない」
「熟慮せずSNSの記事をシェアすれば、多くの、そして不必要な死を招きかねない。もしあなたがこうした誤情報の連鎖を断つことができたら、これ以上の勝利はない。SNSは、害も多いが、利用しないわけにはいかない。賢く、そして社会に利する形で」
新型コロナウイルスの感染拡大や、アメリカに端を発する人種差別撤廃の動き。さまざまな社会問題が、今、SNSをプラットフォームとしている。それは、先進国も新興国も関係なく、まさにグローバルな課題として浮かび上がっている。
(原文http://www.dailynews.lk/2020/06/29/editorial/221774/perils-social-media)