「ウィズコロナ」の時代に求められるもの
感染拡大から3年目を東南アジアの社説はどう報じているか

  • 2022/9/13

 新型コロナの感染拡大から3年目となった各国は、ようやく「ウィズコロナ」の社会にどう対応していくか、具体的かつ本格的な対策を模索し始めたようだ。

(c) Olya Kobruseva / Pexels

フィリピンは独立疾病予防センターの設立を訴え

 フィリピンの英字紙デイリーインクワイアラーは、8月14日付の社説で「フィリピン版CDC」を設置する法案を強く支持した。ここで言うCDCは、アメリカで保健省とは別に感染症などの研究や対策を担っている政府機関の「疾病予防管理センター」を指している。
 フィリピンは、新型コロナ感染拡大によって多くの感染者と死者を出すとともに、厳しいロックダウンを何度も経験した。社会の機能がマヒし、経済に深い傷を負った。社説はこの点を「対コロナ政策の失敗」と位置付けており、「同じ間違いを繰り返さないためには、保健省とは別の独立した疾病予防センターが必要だ」と主張している。
 フィリピン版CDCの役割は、病気を認定し、症状を研究し、感染症の場合は接触者を追跡し、必要な措置をとることだという。感染症対策は、「政治的」に決定されるのではなく、「科学的」に方向付けられる必要がある、と社説は説いている。

抗ウイルス剤の使用拡大を求めるタイ

 タイの英字紙バンコクポストは、8月8日付の社説で、抗ウイルス薬の使用をより多くのケースに認めるべきだ、という論を展開している。
 社説によれば、タイでは現在、抗ウイルス薬の使用が、60歳以上の人や妊娠中の女性など、ハイリスクで重症のケースに限定されている。これを緩和し、新型コロナの治療に活用するべきだというのが、社説の主張だ。
 タイに限らず、新型コロナの新規感染者は決してゼロにはなっていない。日本でも、第7波ではこれまで以上に多くの人たちが感染した。しかし、重症化するケースが減っていることで、対策の中心は「治療方法」や「療養方法」に移りつつある。今後、ワクチン接種による予防対策が継続する一方で、どのように効果的に治療をするか、という研究が進められていかなければならない。

突然の変化への備えを説くシンガポール

 シンガポールでは、8月末からマイク着用義務が大幅に緩和された。行動制限も緩和されており、社会全体に安堵感が広がる。しかし、シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは8月25日付の社説で、「規則が緩和されても、注意を怠るな」と呼びかけた。
 社説によれば、シンガポールでは、公共交通機関や医療機関などを除くほとんどの場所でマスクの着用義務が解除された。しかし、「規則が緩和されたからといって、私たちが感染症の森から完全に抜け出したというわけではない」とし、引き続き、自分と自分以外の人々を守るための行動をとるように呼びかけた。
 また同紙は、「突然の変化」に心の準備をするようにとも呼びかけた。新型コロナは、ウイルスの突然変異によって症状が重症化したり、ワクチンが効きにくいと言われたりした。感染拡大が始まった頃の衝撃とは別に、私たちはその後、何度も大きな「変化」を経験した。社説は、こうした変化にも冷静に対応できるよう、心構えをしておくことが大事だ、と主張している。
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 いずれの紙面でも、この3年間の経験をもとに「次の感染症」に備える大切さを訴えている。私たちは、自然災害だけでなく、感染症もまた自分たちの生命と社会を破壊する可能性があることを、多大な犠牲を払って学んだと言える。

 

(原文)
フィリピン:https://opinion.inquirer.net/156042/the-need-for-a-philippine-cdc

シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/the-straits-times-says-rules-relaxed-but-caution-must-remain

タイ:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2363556/lift-antiviral-drug-curbs

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