スリランカの社説「世界水の日に寄せて」
「すべての人に安全な水を 限りある資源を大切に」
- 2021/3/28
3月22日の世界水の日を前に、スリランカの英字紙デイリーニューズは3月21日付社説でこの話題を採り上げた。
安全な水とトイレ
世界水の日は、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された環境と開発に関する国連会議において提唱された。同年12月、毎年3月22日を世界水の日とすることが国連総会で定められ、1993年以降、毎年、啓発イベントなどが実施されている。
社説は、「世界水の日は、水の貴重さを知ると同時に、世界で22億人が安全な水を利用できない人たちがいることを知る日でもある」とした上で、「持続可能な開発目標」(SDGs)の中で6番目のゴール「安全な水とトイレを世界中に」として謳われているこの問題に世界が一丸となって取り組まなければならない」と訴える。
さらに社説は、さまざまなデータを基に、安全な水へのアクセスを確保する重要性を主張する。
「世界では今、3人に1人しか安全な飲み水を利用できない。今後、2050年までに最大57億人が1年のうち1カ月は水不足に苦しむだろう。気候変動に左右されない安定した水の供給と衛生的な環境が確保されることで、毎年36万人の赤ちゃんの命が救われる。また、2040年までに世界のエネルギー需要は25%、水の需要は50%以上高まるだろう」
社説によれば、今年の世界水の日は、「この大切な資源をどう守るか」が中心テーマだという。
「水の価値は、金銭に代えがたい。水は、私たちの暮らしや文化、健康、教育、そして自然環境に深く、複雑に関わっており、あらゆる人に利益をもたらすものだ。その価値と役割を認識しなければ守ることができない
コロナで再認識された衛生環境の重要性
さらに社説は、コロナ禍によって水の貴重さがより明確になったと指摘し、次のように述べる。
「水は、健康にも欠かせないものだ。コロナ対策でもそれが証明された。感染症を防ぐ上で最も基本的かつ重要なことは、手洗いだ。頻繁に手を洗えば感染を防げることは、1840年代から知られている。しかし、世界中ではいまだに多くの人が清潔な水で手を洗うことができないため、新型コロナのまん延を招いた」
その上で、「すべての国が、水やトイレなど衛生環境の改善に十分な投資をすべきだ」「水やトイレの不備によって人々の命が危険にさらされることがあってはならない」と、主張する。
また、こうした生活用水に加え、農業用水も水の役割を考える上では好例だ。社説は、「もし、灌漑施設を通じて農家が十分な水を得られなければ、農業の生産性は落ちるだろう。特に、水を多量に必要とする稲作への影響は大きい」と、指摘する。スリランカ政府は灌漑設備の改善に着手し、2023年を目標に各地の農業貯水槽の整備を進めている。計画通り実施されれば、農業の生産性が向上すると同時に、安全な飲み水の提供にもつながることが期待されている。
スリランカでは、上水道の普及率が58%であり、他の途上国に比べると水道の普及が進んでいるが、いまだに井戸や雨水を使っている人々もおり、安全な水の確保が重要な課題であることに変わりはない。
スリランカ政府は水供給省を立ち上げ、2025年までに国民すべてに安全な水の供給をすることを目指しているという。「これは決して難しい目標ではない。この国には十分な水源がある。水の真の価値を知り、限りあるこの資源を大切に使わなければならない」と、社説は訴えている。
(原文:http://www.dailynews.lk/2021/03/22/editorial/244624/value-water)