それでもミャンマー音楽は続く
伝統音楽と大衆音楽、クーデター以降の音楽の在り方

  • 2023/7/9

食べる為に音楽を

 2023年6月、私はヤンゴン郊外に住む友人宅を訪ねました。この時期のミャンマーは雨季で、スコールが降ったり止んだりする不安定な天気。湿気がまとわりつきます。しかもこの時は停電中でエアコンも扇風機も動かない。仕方ないと割り切り、私は友人たちとおしゃべりを楽しんでいました。
 すると叩きつけるような雨音の中、微かに女性の歌声が聞こえてきました。テレビやラジオからではなく明らかに生の歌声です。サンダルを履き慌てて外に飛び出すと、数件先の民家の軒先に女性が座り込み、小さな太鼓を叩きながら歌っていました。

(2023年6月7日、ヤンゴンにて。筆者撮影)

 母親とその息子たちでしょうか。豪雨の中、ずぶ濡れになりながら母親は淡々と歌い続けます。右手で太鼓を叩き、左手を空に差し出しています。息子たちは母親の仕事が終わるのをじっと待っています。僕と友人は、地面に置かれたボウルに少しばかりのお金を入れました。
 歌い終わると一家は数メートル先の民家へ移動し、座り、また歌い始めました。雨はなかなか降り止みません。やがて歌は路地裏の奥へと消えていきました。

音楽が伴う日常を再び
 軍事クーデター以降、現地の人々は大変な生活を送っています。ましてやミュージシャンは食うに困っています。何故ならそれまでの収入源だった祭りや儀式や結婚式がほとんど無いからです。私の友人のミュージシャンも楽器を売って糊口を凌いだりアルバイトを始めたりしています。
 音楽は不要不急の存在です。しかし今のミャンマーにおいて、音楽が苦境に立つ人々のいくばくかの拠り所になっていると思います。音楽は聴く人を励まし、支え、肯定してくれます。
 現地が1日も早く平和になり、音楽が生活の中で再び鳴り響く日が来るよう祈り続けています。

 

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