「新型コロナ」が変えたもの、残すもの
ウイルスと共に生きる覚悟を呼びかけるアジアの社説
- 2022/6/4
新型コロナの感染拡大が始まって、2年あまりが過ぎた。世界の各地では今も新規感染者が確認されているものの、ワクチン接種や治療薬の利用が進み、国境を越えた移動も以前よりずっとハードルが低くなった。しかし、コロナ禍は多くの教訓を社会に残した。そして、「ウイルスと共に生きる」という覚悟を我々に強いることになった。
新しい働き方の有効性を論じるインド
インド英字メディアのタイムズオブインディアは、5月30日付の社説で「週4日の勤務は可能か」と論じた。
コロナ禍で最も変化したことの一つは、「働き方」だろう。なかでも、リモート勤務やオンライン上での仕事など、コロナ前の社会では考えられなかった働き方が普及したことによる影響は大きい。この働き方は、コロナ禍が下火になった現在も、新しいワーキングスタイルとして定着しつつある。
しかし社説は、週4日勤務し、週に3日休むという働き方が誰にとっても有効で、歓迎されるというわけではない、と指摘する。社説はまず、週4日勤務がふさわしい労働者がどれぐらいいるのかについて論じる。そして、そういう人々は社会を動かすほんの一握りで、あとの人々はIoTや人工知能を用いることによって起きる技術革新、いわゆる「第4次産業革命」に翻弄されるだろう、との見方を示す。
「ある労働者にとって、週4日勤務は確かに労働時間の短縮につながるが、同時にそれは給料の減収を意味するかもしれない。また、ある雇用者にとっては、従業員を週に3日、休ませるために社員を増やすか、それとも以前の週5日勤務体制を続けて優秀な労働力を失うのか、という究極の選択を迫られることを意味するだろう。週4日勤務という働き方は、個々人のスキルや職種によって、受け止め方が大きく変わる。未来はすべてバラ色なわけではない」
シンガポールは教訓の継承と実践を呼びかけ
シンガポールの英字紙ストレーツタイムズも、「コロナ後」についての社説を5月7日付で掲載した。この社説は、より直接的にウイルスとの共生を取り上げ、論じている。
「コロナ禍と闘うために、2年以上にわたって試行錯誤を重ねた経験から、われわれは、最悪の状態から立ち直り、乗り越えて生き延びるために必要な教訓を得た。われわれはこの教訓を今後も胸にとどめ、正体不明の感染症Xの到来に備えなければならない」と、社説は指摘する。
「新型コロナと共に生きるということは、いつまた新しい感染症が突然広がり、感染拡大を防止するために科学や医療の創意工夫と社会の一致団結が求められ、試される日がくるか分からないということを肝に銘じ、現実の問題としてとらえ続けるということだ。シンガポールは、その日のために備えを忘れてはならない」
新規感染者の拡大が収束を見せている今、早々に次の感染症対策への準備を呼びかける。喉元過ぎぬうちに、そして記憶が新しいうちに、感染拡大の予防に効果的だったことを社会に定着させる必要がある。社説は、優良な医療機関やヘルスケア・ワーカーへの適切な支援、科学やバイオ医療分野の能力強化、国際的な研究協力の体制整備などが引き続き必要だと主張する。
「感染症Xの到来は誰も予想できないうえ、残酷な結果をもたしかねない。シンガポール国民一人一人が、この国家プロジェクトの遂行に重要な役割を担っているのだ」
国籍や人種を問わず、世界中の人々が、感染症対策は一人一人が実践し、行動しなければ効果がないことを学んだ。マスクをはずすようになっても、この教訓は忘れてはならない。
(原文)
シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/moving-forward-with-lessons-from-covid-19