タイのプーケットで外国人観光客の受け入れ再開
「サンドボックス計画」と観光業のゆくえ
- 2021/4/18
タイのプーケット島で、新型コロナワクチンの接種などを条件に、外国人観光客を受け入れる計画が発表された。3月28日付のタイの英字紙バンコクポストは、社説でこの話題を採り上げた。
封じ込めに成功した国
タイでは新型コロナ感染は極めて低く抑制されてきたが、昨年12月にサムットサコン県を中心にクラスター感染が発生し、陽性者が急増した。感染拡大は今年2月まで続き、2月初旬のピーク時には一日の新規感染者が800人を超えることもあった。しかし、3月下旬には新規感染者が1日100人以下となり、感染拡大は再び落ち着きを取り戻しつつある。
このタイミングで「サンドボックス」計画が発表された。これは、7月1日以降、ワクチンを接種して陰性が証明された旅行客は隔離期間なしで受け入れるというものだ。その最初のモデル都市としてプーケットが選ばれた。
社説は、「タイ政府は、7月からプーケット島に外国人観光客を受け入れることで、世界で一番行きたい観光地の名誉を取り戻したいと考えているようだが、この動きには懸念もある。世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大していても抑え込みに成功していたタイで、昨年12月に感染者が急増し、首都バンコクも含め緊張が高まった苦い経験によって、われわれは新型コロナウイルスが油断すればいつでも国境を越えて蔓延するものだという教訓を得た」と、している。
しかし、タイ政府は感染を再び封じ込めつつあることに自信を持ったようだ。社説も「濃厚接触者の追跡、隔離、治療がうまく機能した」と指摘し、政府だけでなく、コミュニティの協力があって感染封じ込めに奏功したと評価している。
「丸めて捨てられた島」
7月からプーケットをモデルに実施されるサンドボックス計画では、旅行者はワクチンを接種し、感染の可能性がないことを証明しなければならない。さらに、空港でのPCR検査を受け、タイランドプラスという追跡アプリをインストールして、プーケットにいる間、常に起動しておく必要がある。
この計画について、社説は「瀕死の観光業界にとって光明になる」と、前向きに受け止めつつ、これまでプーケットの観光業が外国人旅行客の存在に依存しすぎだったと指摘し、改善を求めている。
「プーケットは、以前は5000億バーツ規模の観光市場だったが、コロナ禍によって海外からの旅行客が来られなくなり、島全体がビーチの食堂の紙ナプキンのようにくしゃくしゃに丸めて捨てられてしまった」
その上で社説は、プーケット観光に代表されるタイの観光事業は、今こそその在り方を見直すべきだと指摘する。
「戻ってきた外国からの友人をあたたかく、注意深く迎えるのはもちろんだが、彼らに頼るのではなく、自分たちでも観光資源の多様な活用方法を考えるべきだ。軽薄な遊びを提供するのではなく、レストランなど食文化を育んだり、芸術や文化に関するアトラクションを増やしたり、外国人留学生や高齢者など長期滞在者を増やしたりすることも検討されるべきだ」
コロナ禍で深い傷を負った観光業界だが、「より良く戻る」ことも大切だ。これまでは、社説も指摘する通り、外国人目当てに高額な乗車料金をふっかけたり、高い土産物を売りつけたりと、観光地としてのプーケットは必ずしも良い評判ばかりではなかった。より幅広い観光客に愛される場所へ、より良く戻ることができれば、プーケットはサンドボックス計画だけでなく、貴重なモデル都市となるだろう。
(原文:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2090803/phukets-chance-to-start-afresh)