児童婚や虐待から、子どもを守れ!
終わらない子どもの人権侵害を、南アジアの当事国はどう考えている?
- 2023/1/9
災害、貧困、紛争など、社会環境の悪化にはさまざまなものがあるが、その影響を最も受けやすいのは子どもたちだ。南アジアの2紙から、自国の子どもをめぐる問題を取り上げた社説を紹介する。
児童婚の根絶を目指すネパール
ネパールの英字紙カトマンドゥポストは2022年12月20日付の社説で児童婚の問題を採り上げている。国連児童基金(ユニセフ)によると、児童婚は、「18歳未満での結婚、またはそれに相当する状態にあること」と定義される。
社説が引用したユニセフのデータによると、ネパールの児童婚率は約40%で、南アジアではバングラデシュ(59%)に次いで2番目に高く、アジア全体で3番目に高いという。インドは27%、パキスタンは21%、ブータンは26%で、いずれもネパールを下回っている。
社説はさらに、児童婚をした女子のうち14%が14歳から19歳までの間に妊娠をしたという。子どもの権利擁護に取り組む団体によると、一般的に児童婚の背景には経済的な理由があるが、特にネパールでは、文化的な慣習や子どもの権利に対する認知の低さ、読み書き能力の欠如など、さまざまな社会的な環境も影響しているという。
ネパール政府も児童婚を問題視しており、1963年にはすでに児童婚を禁止している。2017年には、結婚可能な年齢を男女共に20歳に引き上げているが、この「20歳」という年齢は、世界でも最も高い結婚年齢だという。さらにSDGsの取り組みの一環として、2030年までには児童婚を全廃することを目指している。「政府も、関係団体も児童婚の撲滅に向けて努力をしている。しかし、児童婚は都市部でも農村部でも広がっている。いったいどうしたらこの社会悪を絶つことができるのだろうか」
児童婚は、「子どもにとって大切な成長期に教育の機会を奪い、将来の可能性を破壊するものだ」と社説は指摘し、次のように述べる。
「児童婚をなくすためには、若い男女、親を草の根から教育して意識を高めなくてはならない。戸別訪問やソーシャルメディアキャンペーンを通して、児童婚の精神的、身体的、法的、教育的な影響を認識させるのだ。そのうえで、少女たちが適切な判断ができるよう、エンパワーすることが必要だ」
「今日においても、女の子は家族の負担だとみなされる。しかしその考え方を変えることは不可能ではない。学校や家庭や他の機関が、児童婚の根絶を目指して協力し、教育現場での働きかけや貧困家庭への補助金を提供するなど、根気強く取り組んでいくべきだ」
パキスタンで繰り返される、虐待・強姦・殺害
一方、パキスタンの英字紙ドーンでは、2022年12月15日付の社説で「危機にある子どもたち」と題した記事を掲載した。
こちらの社説が採り上げたのは、子どもへの虐待だ。「ザイナブ・アンサリちゃんの事件で国中に激震が走ってから、すでに4年も経つ。それなのに、なぜ、いまだに子どもの虐待や強姦、殺害がニュースになり続けているのだ」と、社説は嘆く。ザイナブ・アンサリちゃんの事件とは、2017年1月、パキスタンのパンジャブ州ラホールで6歳の少女が強姦・殺害された事件だ。遺体はゴミの集積所に捨てられていた。事件が発生した地域では、同様の児童殺害事件がそれ以前にも複数発生しており、ザイナブちゃんの事件をきっかけに警察への批判はピークに。市民らの抗議行動にまで発展した。犯人は同年10月に絞首刑になった。
社説は、「12月14日付の同紙に掲載されているだけで3件もの子ども虐待のニュースがある」と指摘する。カラチでは、6歳の少女を強姦して殺害した隣人が逮捕された。また、11歳の少女が義父に強姦された事件は、捜査が不十分であるとして義父が無罪になったという。そして3つ目のニュースは、トランスジェンダーの子どもについてだ。社説によれば、トランスジェンダーの子どもは、家族にも見放された結果、犯罪に巻き込まれていくのだという。
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暴力はいつも弱い者に向けられる。しかし、社会で最も弱い者である子どもたちは、同時に未来をつくる人たちでもある。子どもたちの権利を侵害し、暴力を許すことは、まさに私たち大人が自分自身の未来を破壊することなのだ。
(原文)
ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2022/12/20/too-young-to-marry-1671553858
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1726449