水面下で動く「終戦後」のウクライナ鉄道ビジネス
戦時下でその重要性がますます高まる

  • 2023/6/26

鉄道インフラ復興はビジネスチャンス

 それから8カ月後、5月19日付の時事通信は、ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が、同国の鉄道インフラ復興に際し、日本の新幹線のような高速鉄道の整備を検討しており、日立と協議していると報じた。イノトランスを契機に日本でも鉄道関連の復興支援が動き出したと思ったが、日立に確認したところ、「協議を始めたという事実はない」とのことだった。日立のコメントが正しければ、ウクライナ側の願望が思わず口に出たのかもしれない。

 もっとも、世界銀行とウクライナ政府などが3月23日に共同で発表したリポートによれば、ウクライナの復興に必要な額は4110億ドル(58兆円)に上り、そのうちの22パーセント、904億ドル(約12兆円)が輸送関連で、住宅(同17パーセント)、エネルギー(同11%)などを大きく上回る。ウクライナの復興支援が鉄道産業にとってビッグビジネスになることは間違いない。

 6月16日から18日にはG7交通大臣会合が三重・伊勢志摩で開催された。会合では「イノベーションによる誰もがアクセス可能で持続可能な交通の実現」をテーマにさまざまな議論が行われた。

 ウクライナの復興も主要テーマの一つとして議論され、持続可能な交通インフラの復興と、連結性を強化する強靭なサプライチェーンの構築を支援することが確認されたほか、グローバルな交通サプライチェーンの強化に向けたワーキンググループの設立を検討することも合意された。

 ロシアとの戦争の行方は見通せないが、戦後の復興支援に向けた地ならしは着実に整いつつある。次回のイノトランスは2024年9月に開催される。前回のイノトランスにおける主要テーマは環境対策だったが、次回の開催時までには戦争が終結し、ウクライナにおける鉄道インフラの復興支援が主要テーマになっていることを強く願いたい。

 

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