東南アジアの五輪「SEAゲーム」の真の目的は
地域の連帯を目指す、不公平なスポーツ大会

  • 2023/6/28

 「東南アジアのオリンピック」と呼ばれる、東南アジア競技大会(通称 SEAゲーム)が5月5日から17日まで、カンボジアの首都プノンペンで開催された。2年に1度開催されるこの大会をカンボジアが主催したのは、今回が初めて。フン・セン政権は、「国威発揚の機会」ととらえ、国を挙げて開催に取り組んだ。

(c) Guduru Ajay bhargav / Pexels

開催国カンボジアは大奮闘

 カンボジアの英字紙クメールタイムズは、5月18日付で「カンボジア、大成功のSEAゲームに幕を下ろす」という記事を掲載した。

 同紙によると、32回目となる今回のSEAゲームには、東ティモールを含む東南アジア11カ国から1万2,400人以上の選手が参加。36の競技と、デモンストレーションスポーツが行われた。獲得メダル数は、ベトナムがトップ、続いてタイ、インドネシアと続き、開催国のカンボジアは282個で4位となった。これは、カンボジアがSEAゲームで獲得したメダル数としては過去最高だと同紙は報じる。

 来たる7月に5年に1度の総選挙を迎えるフン・セン政権は、このSEAゲームを盛り上げるために、すべての競技会場への入場を無料化。また、地元テレビ局や国際放送局の放映料を免除した。

開催国に有利なルール それでも連帯のために

 クメールタイムズ紙が「各国から賞賛された」と胸を張ったのとは対照的に、インドネシアの英字紙ジャカルタポストは、5月13日付の社説でSEAゲームの役割について冷静に論じた。

 同紙は、SEAゲーム終了後にASEAN首脳会議がインドネシアで開催されたことに触れ、「SEAゲームをはじめ、スポーツの発展によって、この地域の社会文化共同体の構築が促進されることが証明されている」としたうえで、「しかし、今年のSEAゲームがASEAN首脳たちの関心を引くことはなかった。SEAゲームが話題になったのは、インドネシアとカンボジアの二国間首脳会談の間だけだった」と指摘。SEAゲームの開催によって何もポジティブな影響が生まれなかったという見方を示した。

 また社説は、SEAゲームの役割について「現在では、開催国の国家的な権威を高揚させるものとして機能する傾向がある」とも指摘する。というのも、SEAゲームでは、「開催国に金メダルを多く獲得させる」ために、開催国が得意とする競技を選び、他国が得意とする競技を種目から除外する特権が与えられているためだ。社説はこれを「ASEAN方式」と呼び、「このような取り決めは、オリンピックの信条に反すると考える人も多いだろう。しかし、SEAゲームは長年にわたり東南アジア諸国の団結を目的として開かれてきた。このASEAN方式こそが、この大会の持続性を高めているのだ」と、分析した。

          *

 今回のSEAゲームには、2021年2月にクーデターにより軍が実権を握ったミャンマーの選手団も参加した。ASEANはミャンマー軍をミャンマーの正式な代表と認めておらず、会議への参加を認めていないが、SEAゲームはミャンマー軍に対しても「門戸を開いている」という。社説は、サッカーのワールドカップがウクライナ侵攻を理由にロシアを排除したことに言及し、「SEAゲームの方が、より地域の団結に貢献している」と強調するとともに、SEAゲームを「単なる連帯の場」で終わらせるのではなく、スポーツの祭典としてより高いレベルに引き上げるために、「アジア大会やオリンピックで選手たちが輝くためのゲームチェンジャーを考えるべきだ」とも指摘している。

(原文)

カンボジア:

Bowing out in style: Cambodia lowers curtains on successful SEA Games – Khmer Times (khmertimeskh.com)

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/05/12/sea-games-game-changer.html

 

 

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