COP27で顕在化した古くて新しい南北問題
深まる反欧米への反発から生まれるロシアや中国支持の動き

  • 2022/11/22

食糧や経済の面でも見られる矛盾

 COP27をめぐっては、欧米からの参加者の多くが、CO2を多く排出するプライベートジェット機に乗ってエジプトを訪問したという矛盾が非難された。先進国の主張にみられる自己矛盾は、気候変動やロシアのウクライナ侵攻などの影響を受けて途上国が食糧危機に陥っている今日でも見られる。

 先述のように、多くの途上国は洪水や旱魃、甚大な自然災害などで不作に見舞われ、食糧難に陥っている。世界銀行によれば、サハラ以南のアフリカでは2億7500万人から3億8000万人が深刻な食糧不安に悩まされている。

気候変動の結果としてのアフリカにおける食糧危機の深刻度は増している。(c) Global Agriculture & Food Security Program

 それに追い打ちをかけるかのように、輸入食糧価格のインフレが起きている。コロナ禍による物価高騰に加え、米国内の金融政策や経済政策の失敗から生じたインフレで米ドル建ての食品や肥料の値段が上がっているからだ。

 2021年には、米財務省や米連邦準備制度理事会(FRB)が「インフレは一時的なもの」だと見誤ったため、物価高騰が制御できなくなり、急激な利上げによってインフレを退治する必要に迫られた。結果として米国の高金利による益を目当てにドルが買われたことで、世界貿易の決済通貨であるドルの価値が急騰。貧しい途上国は、食糧やエネルギーの輸入価格が実質上、急伸して苦境に立たされた。

米国政策担当者のインフレ予想誤りによる世界的な物価高騰や、インフレ退治のための利上げ政策で起こったドル高は、途上国が食糧を輸入したり、負債を返済したりするうえで重大な困難を引き起こした。写真は、イエレン米財務長官とフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長。(c) Secretary Janet Yellen

 さらに悪いことに、途上国が輸入代金の支払いなどのために先進国から借りている負債の大半もドル建てであるため、毎月の借金返済額が実質的に膨れ上がっているだけでなく、利息の返済額も増えて、二重三重に重い負担を強いられる構造だ。いくつかの国では債務不履行が生じ、国際的な救済が必要になる可能性もある。

 ジャネット・イエレン米財務長官は、「先進国が政策を変更したことによって、途上国が最も深刻な打撃を被っている」ことを認めたが、それでも「為替調節は市場に任せる」と主張し、途上国の窮状には関知しないとの態度を決め込んでいる。米国のインフレを制御するのに手一杯だからだ。

 このように、環境・経済・食糧の面で富める国と貧しい国の不平等が深まる中、多くの途上国では欧米に対する反感が強まっている。一部の国では、「反欧米」の流れからロシアや中国を支持する動きも見られるようになり、危惧される。

 だが、この問題は植民地時代からの欧米諸国の支配に根差しており、「脱植民地化」が進んでいない証左とも言える。南北対立の激化は、グローバルサウスにおける社会の不安定化や戦争・難民発生などを通じて、先進国にも波及していくだろう。

 化石燃料で動く兵器や戦争は、産業や乗り物とは比較にならない膨大な量の二酸化炭素を排出することで知られる。先進国の矛盾や一貫性のなさが原因で将来的に新たな戦争が起こり、クリーンエネルギーへの取り組みが相殺される事態となれば、歴史上の大きな皮肉としか言いようがない。

 

 

 

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