大気汚染対策を急げ
個人の行動と意識の変容で社会を変える

  • 2022/4/23

 日本で春の訪れを感じるころ、アジア各地でもそれぞれ季節の変わり目を迎える。しかし、それは必ずしも「喜び」ではないようだ。

大気汚染対策のためには、ごみ対策も急がれる (c) Leonid Danilov / Pexels

ごみ行政の強化を訴えるネパールの社説

 ネパールの英字紙「カトマンズポスト」は、3月31日付の社説で、首都カトマンズを含むネパール盆地の大気汚染について論じた。その書き出しは、「春の朝、冷たい空気が暖かくなるその移ろいを感じることができない。もう夏かと思うほどの強い日差しになっているからだ」。そして、「最近ではその空気に多くの汚染物質が混ざり合っている」と続けた。

 社説によれば、大気汚染の原因は排気ガス、レンガ工場の煙、そして家庭で燃やされるごみだという。「ごみ行政が余りにひどいために、ネパール盆地の人々は、各家庭でごみを燃やさざるを得ない。ごみを処分の方法としては、それが手っ取り早いからだ。そして、これがすでに悪化している大気汚染をさらに悪化させる」

 同紙は、「新型コロナ対策で都市が封鎖されたことによってポジティブな結果があったとすれば、大気汚染が改善されたことだろう」と指摘する。人々が移動せず、リモートワークが普及したため、ようやく青空が取り戻された、と。しかし、コロナ禍が収束し、経済活動が再開するとともに、再び大気汚染の心配が高まっている。コロナ禍による人々の行動様式の変化は長続きしないため、当然ながら、大気汚染の根本的な解決策とは言えないわけだ。

 社説はまず、「政府はなぜ繰り返されるごみ対策を解決しようとしないのか」と、政府の無策を批判する。そのうえで、コロナ禍による新しい行動様式によって青空が一時的にせよ取り戻されたことを考えれば、国民一人一人が意識を変えることで問題は解決に近づくはずだ、と主張する。

 「すべての行動に政府の承認が必要なわけではない。政府が動かなくても、一人の市民としてできることがある。政府には変化のための道筋をつけてもらう必要があるが、もし彼らがそれをしないなら、せめて邪魔しないでほしい」

タイの環境保護団体が政府を相手取り訴訟

 1年で最も暑い季節を迎える東南アジアのタイでも、大気汚染は深刻な政府課題となっている。3月25日付のバンコクポストの社説は、「PM2.5 に断固たる対策を」と題してタイ政府の環境対策の弱さを批判した。

 社説によれば、タイの環境保護団体が3月下旬、タイ政府の国家環境委員会や天然資源環境省などを相手取り、大気汚染対策を怠ったとして訴訟を起こした。大気汚染を解決するための国家計画に従って設定されたアクションプランや政策を誠実に実行していない、という内容だ。

 タイのプラユット政権は2019年、PM2.5問題の解決を国家政策の優先課題に位置付けた。同時にプラユット首相は、2021年を目標年限として、「ユーロ5」と呼ばれる厳しい排ガス規制の導入や、サトウキビ農家によるサトウキビの野焼き禁止、軽油に含まれる硫黄分濃度を10ppm以下に低減することなどを盛り込んだマスタープランを打ち出したものの、いまだ実現していないという。

 「今回の提訴は、大気汚染対策が急務だという現実を浮き彫りにした。タイ政府は長きにわたって水をまいたり、学校を休校にしたり、人々に屋内にとどまるよう言ってきたが、そうした対策は、なんら根本的な解決に結びつかない。タイでは近年、大気汚染の状況を把握するためのアプリが多く登場した。しかし、こうしたアプリに頼るのではなく、為政者が人々の健康と環境のために勇気をもって厳しい判断に踏み切ることが求められる」と、社説は訴えている。

 新型コロナのパンデミックが大きなヤマを越え、経済や暮らしが再び世界で動き始めている。ネパールのカトマンズポスト紙が指摘したように、私たちはコロナ禍において、自らの行動と意識を変えることで社会が変わることを体験した。「ウィズコロナ」の生き方は、結果として、人にも地球にも優しい環境づくりにつながるのかもしれない。

 

(原文)

タイ: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2284886/getting-tough-on-pm2-5

 

ネパール: https://kathmandupost.com/editorial/2022/03/30/avoiding-maladaptation 

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