タイの社説がミャンマー情勢に積極関与を訴え
国境地帯の暴力を見逃すな

  • 2022/1/5

 タイとミャンマーの国境地帯で、ミャンマー軍による空爆が続き、少数民族の武装勢力や住民が組織した国民防衛軍(PDF)への攻撃によって、多くの住民が避難しているという。タイの英字紙バンコクポストは、2021年12月30日の社説でこの問題を採り上げた。

タイとミャンマーの国境地帯でミャンマー軍による空爆が続き、多くの避難民が出ている © The Irrawaddy/Twitter

異例の空爆

 報道によれば、ミャンマー国軍は2021年12月中旬以降、タイ国境での攻撃を激化させている。カイン州では、タイ国境付近で潜伏していた国民民主連盟(NLD)の議員らを拘束するとともに、この地域を支配するカレン民族同盟(KNU)との武装闘争も始まった。
こうした状況を受け、社説は「ミャンマー国境地帯の状況について、タイ政府はこれ以上、傍観しているわけにはいかない」と指摘し、次のように述べて積極的な関与を求めた。
 「ミャンマー軍とKNUの闘いが長引き、タイにも影響が及んでいる。タイ国軍は12月28日、ミャンマー軍に対し、武力の行使について“留意してほしい”と注意を喚起した。しかし、その言葉は不十分であり、停戦と平和的対話を求める外部からの要求を無視したものだった」
 社説は、「空爆」はこれまでになかった事態だとした上で、次のように指摘する。
 「タイとミャンマーの国境地帯の現状は、真剣かつ積極的な仲裁がなければ、悪化する一方だ。タイ側の人々は、過去数十年に渡って断続的な武力衝突を目撃してきたが、空爆は初めてのことだ。国境での衝突がエスカレートするにつれ、流れ弾が国境を越えて着弾したという報告も増えている。防空壕を掘って避難している住民もいる」
 さらに社説は、タイ政府がミャンマー軍に対していまだに強硬姿勢をとらないことに対し、いら立ちを隠さずこう述べる。
 「状況が悪化するにつれて政府のすみやかな決断を求める声も、ミャンマー軍を支援しているのではないかという批判も、ともに高まっている」「ある報告によれば、タイ政府は昨年3月、ミャンマー軍兵士に食料を提供したという。また11月には、タイ外務大臣がひそかにネピドーを訪れ、ミャンマー軍を率いるミンアウンフライン総司令官と会談した。その上、今、国境付近でミャンマー軍が空爆を行うことをタイ国軍が見逃しているという事実は、あまりにも衝撃的だ」

「未来」を共有する隣国

 タイを含む東南アジア諸国連合(ASEAN)は、ミャンマー軍による支配を公式には認めておらず、関係者による平和的な解決に向けた努力を促している。タイも表向きはその方針に従っているものの、平和的解決を仲裁するための積極的な行動には出ていない。
 これを受け、社説は「タイ政府は、もはや傍観者ではなく、平和を構築するための仲裁者とならなければならない。プラユット首相は、タイがASEANで合意した5項目に従うと述べているが、その中には、平和的な交渉と停戦を促すことも含まれている。今こそ、行動に移すべき時だ」と訴え、タイ政府に対し、具体的かつ積極的な関与を求めている。
 「タイは、これまでもたびたびミャンマーの政情に影響を受けてきた。ミャンマーからタイに逃れてきた避難民は2021年12月1日までに9万2000人以上に上り、12月25日には、1日で5358人がタイに流入した。もちろん、タイは人道的な支援を行う必要があるが、そのためには、ミャンマー側と交渉して国境付近を飛行禁止区域にする必要がある。空爆の可能性がある地域で人道支援を行うことはできないからだ」
 タイにとって、ミャンマーは、同じASEAN加盟国というだけでなく、長い国境を接する隣国である。他国とは違う、両国の深い関係について、社説はこう表現する。
 「ミャンマーはタイと2401キロに及ぶ国境を共有しているだけでない。我々は、歴史も、そして未来も共有しているのだ」
批判だけでなく、制裁だけでなく、何よりも国境地帯で暮らす両国の人々を守らなくてはならない。プラユット政権の真価が問われている。

 

(原文https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2239691/step-up-on-myanmar)

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