人権問題の噴出で中国の一帯一路が破綻目前
第三国協力に合意した日本に突き付けられる距離感

  • 2021/11/8

国民保護より国家への忠実

 こうした問題が中国自身でなかなか解決できないのは、中国にそもそも「法治」や「人権」といった概念がない上、国民国家でもないからだ。中国では、「党に忠実な人民」と「国民」は異なる概念であり、中国国籍を持っていても、党に忠実でなければ保護の対象にはならない。国家には国民保護の義務があると考えるより先に、人民の側に自らの血肉を注いで党と国家を守る忠実さを求めるのが中国という国だ。国歌の義勇行進曲に、「我らの血肉で新たな長城を築こう」という歌詞があるのは、その好例だ。

(c) Paulo Marcelo Martins / Pexels

 おりしも、一帯一路政策に対して「中国式植民地主義ではないか」との批判が国際社会から相次いでいる。加えて、大量の中国人労働者が現地に送り込まれることによって、現地の雇用促進につながらない上、地元の人々と中国人労働者の文化的な衝突や民族主義的な反感、治安悪化などの懸念も高まっている。つまり、一帯一路は、沿線の国家にも国民にも歓迎されていないだけでなく、中国人自身にとっても労働搾取されるという怨恨を生んでいると言えよう。中国の国内経済が失速している中、「何ゆえアジアやアフリカといった途上国のために資本とマンパワーを安価で提供しなければならないのか」という不満も中国社会に生まれつつある。
 このような状況を総合すると、客観的に見れば一帯一路はすでに失敗していることを認めざるを得ない局面に来ているのかもしれない。日本は2018年10月、当時の安倍晋三首相が中国を訪問して「第三国市場協力」の枠組みへの協力に合意したが、あれから国際情勢は激変した。日本国内でも、今秋、経済安全保障担当大臣を創設し、経済をテコに地政学的国益を追究する手段として「エコノミック・ステイトクラフト」という概念も浸透しつつある。
 一帯一路は、経済的に見れば、一部の日本企業にとって好機をもたらす政策かもしれないが、国家の安全保障面からみても、人道的立場から見ても、到底、好意的に受け止めるわけにはいかない。政権も新たになった段階で、日本として、一帯一路と明確に距離を置く姿勢を打ち出すタイミングなのかもしれない。

 

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