「B3W」は「一帯一路」の野望を阻むのか
世界の覇権を巡る米中対立の新局面を読む
- 2021/6/28
米国は「プラスアルファ」に勝機
他方、B3Wの方が一帯一路より優勢だ、と見る専門家もいる。台湾国防安全研究院所長の蘇紫雲氏はその一人だ。
同氏は、6月23日にオンラインで開催された「一帯一路アジア太平洋区域国際協力ハイレベル会議」で議長を務めた王毅・外交部長が「この8年の間に中国が140カ国と一帯一路協力協議に調印し、パートナー国が増え続けている」と胸を張っていることについて、ラジオ・フリーアジア(RFA)の取材に答える形で「(王毅の発言は)一貫して宣伝用語にすぎない。実際は、一帯一路の提唱国は減ってきている」と指摘した。
蘇紫雲氏によれば、民主制度下には自由メディアもあれば、国会による監督もあり、途上国自身の権利が比較的保障されるため、権威主義体制より信頼されているという。さらに同氏は、「民主国家では、G7の科学技術が進歩し、安定して透明性があるため、(中国のように)資材をごまかして手抜き工事することは少ない」と指摘。その上で、「さらに重要なのは、これら民主主義国家は公平の原則を遵守しており、国際基準規範に準じて中国のようにわざと債務の罠にはめて99年の租借権を奪う状況は発生しないだろう」との見方を示す。
前出のサックス氏は、「途上国の中には中国の融資のやり方に強い不満を持つ国もあり、債務の罠外交だと批判している」「一帯一路プロジェクトの労働者は中国から連れて来られた中国人労働者であり、現地の人々や企業は技術も賃金も得られない上、商業金利以上の貸付が行われている例もある。一帯一路プロジェクト関連の腐敗やスキャンダルも多い」と指摘し、米国は中国との融資合戦に乗る代わりに、現地の労働者に対する研修制度や技能移転などのプラスアルファで勝負すべきだとしている。
その上で同氏は、「中国と完全に同じものは提供できないし、それは我々のすべきことではない」「再生可能インフラといった、ハイクオリティで、かつ現地の労働者に技能移転するようなプロジェクトを行ってはどうか」との見方を示す。
ただ、そうなると、規模的には到底、一帯一路に対抗できず、「B3W以外に、その他領域で(一帯一路や中国の膨張を阻止する)措置を取る必要がある」のが実態だ。環太平洋パートナーシップ協定(CPTTP)などの枠組みの活用もその一つだ。
いずれにせよ、日本の主導力があらためて問われることになるのは間違いない