米中対立でブロック化する世界、立ち位置問われるアジア諸国
中露による新たな枢軸により揺らぐ国際秩序

  • 2024/6/14

 ロシアのプーチン大統領は5月16日と17日の二日にわたり、5期目の大統領に就任後初となる外遊先として中国を公式訪問し、習近平国家主席との首脳会談に臨んだ。
 報道によると、両首脳は経済関係の強化などで合意したほか、ウクライナ情勢やパレスチナ情勢についても意見を交わしたという。また、二国間の包括的戦略パートナーシップに関する共同声明にも調印した。

中国・北京で開催された首脳会談で二国間文書を交換したロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(2024年5月16日撮影)(c) 代表撮影/ロイター/アフロ

ロシアとの関係見直しを迫られるインド
 中国とロシアの関係強化を受け、インドの英字メディア、タイムズ・オブ・インディアは、5月18日付の社説で「インド政府はロシアとの関係を見直すべきだ」との意見を示した。
 社説はまず、「ロシアと中国は、アメリカが冷戦時代のメンタリティで世界の安全保障を不安定にしていると批判している。だが、ロシアはウクライナを侵略している国であり、中国はインド領内へ侵攻を繰り返している国だ。さらに、両国とも民主主義国家である台湾を脅す一方、あの北朝鮮のことを“不当な扱われ方をしている”と見ている。それがどういうことを意味しているのか、我々の言わんとすることが分かるだろうか」と、読者に問いかける形で両国の姿勢を批判した。
 また、ロシアと中国を「新たな権威主義の枢軸」と名付けて、自らを「混沌とした世界の安定化勢力」だと見なしている両国に対し、「混沌の大部分を引き起こしているのは彼らの方だ」と断じた。
 さらに社説は、関係を強化している両国に対してインド政府がどう向き合うべきかを論じた。インドは、武器輸入でロシアに依存している一方、中国とは敵対関係にある。「中国とロシアが防衛協力を強化するのであれば、インド政府はこれ以上、ロシアに依存すべきではなく、インドが現在、進めている兵器システムの多様化を加速させる必要がある。今こそ、モスクワとの戦略的関係を見直し、西側諸国との関係をもっと緊密にしていく時だ」。
 中国とロシアの接近は、インドとロシアの関係をも大きく変化させる可能性があると言えよう。

激化する米中対立の狭間でASEANはどう立ち回るのか
 インド紙が指摘するように、世界ではアメリカと中国を2つの軸としてブロック化が始まっているようにみえる。その「はざま」にいる地域ブロックの一つが、東南アジア諸国連合(ASEAN)だ。とはいえ、ASEAN加盟各国の中国やアメリカとの距離感はさまざまで、なかなか対外的に一枚岩になることができずにいる。
 タイの英字紙バンコクポストでは、ベテランのジャーナリスト、カビ・チョンキタボン氏が、5月21日付で「東南アジアが見つめる米中関係、今後の20年」という解説記事を執筆している。
 カビ氏は「今後20年間、東南アジアはどのように変化していくだろう。今日の予測不能な地政学的状況を鑑みれば、台頭しつつある新しい国際秩序が各国を巻き込んでいくのを緩和する形で戦略的自律性を維持するだろう」と概観する。
 カビ氏は、近年の米中関係について「対立は激化し、二国間関係が悪化の一途をたどっている。今、ワシントンと北京は、それぞれの戦略を支持する友人や同盟国を世界中から呼び集めているところだ」と表現。その中でASEANがどう立ち回るべきか、を考察した。またカビ氏は、ASEANはどちらかに偏って与するのではなく、その「招集力と説得力」を用いて「米中対話のプラットフォームを築く役割を担うべきだ」と主張する。
 ASEANは間もなく「ASEANビジョン2045」を発表する。カビ氏は、このビジョンがこれまで以上に対外関係に焦点を当てたものになると見ており、「ASEANがアメリカと中国という2つの超大国からの信頼を得るに足るプラットフォームとして機能すること」こそ、地域の安定と繁栄に必要なことだと指摘している。

(原文)
インド:
https://timesofindia.indiatimes.com/blogs/toi-editorials/putin-xi-bhai-bhai-which-means-new-delhi-must-revise-its-moscow-ties/
タイ:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2796479/sea-eyes-next-20-years-of-us-china-ties

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