「民主主義は千の切り傷で死に至る」
選挙の季節に突入するアジアの報道ぶりを読む
- 2026/2/15
インドネシアで、地方首長を選ぶ直接選挙の廃止が検討されている。昨年12月、最大与党のゴルカル党が廃止を提案し、プラボウォ大統領も前向きだという。
地方首長の直接選挙は、1998年の民主化改革の一環として、大統領の直接選挙とともに導入された。報道によると、与党がこの廃止議論に前向きなのは「コスト削減」を主な理由にしているという。しかし、今年1月上旬に発表された世論調査では、回答者の6割以上が廃止論に反対と答えており、国民の反発は根強いようだ。

インドネシアの議会選挙の様子(2014年4月9日撮影)© Davidelit / wikimediacommons
直接選挙の廃止に反発するインドネシア紙
インドネシアの英字紙ジャカルタポストは、1月20日付で「民主主義への直接攻撃」と題した社説を掲載した。
「民主主義は千の切り傷によって死に至る」。社説は強い表現で、民主主義への攻撃に憤りをぶつけ、こう続ける。「現代の民主主義は、一挙に滅びるものではない。民主主義はもはや突然の革命や軍事クーデターによって崩壊するのではなく、反民主主義勢力が制度や規範、法の支配を徐々に削り取ることで、断片的に解体されていく。今、その衰退を食い止める努力をしなければ、その終焉を止めるには手遅れになるかもしれない」
そのうえで社説は、今回の直接選挙廃止議論を、「インドネシアが達成した民主主義の成果を覆そうとする試み」の一つだと位置付けたほか、汚職撲滅委員会の弱体化、軍部の政治・経済活動への復帰などを挙げている。与党側が主張する「コスト削減」が真の理由ではない、という指摘だ。
社説は、直接選挙、特に大統領を直接選ぶことについて、「インドネシアに魔法のような効果をもたらした」としたうえで、「人間の尊厳という観点から、国家の最高政治職に誰が就くかについて個人が発言権を持つことは、多くの有権者にとって確かに誇りの源となっている」と述べる。さらに、食料や医療、インフラへのアクセスなど、国民の願望や要求に対し、指導者たちがより敏感になったとの見方を示す。
今回、廃止が議論されているのは地方首長の直接選挙のみだが、社説は「やがて、大統領についても間接選挙が議論される恐れがある」との懸念を示し、「そうなってから慌ててインドネシアの民主主義について騒いでも、すでに手遅れだろう」と指摘する。
プラブウォ政権に対しては、昨年後半から若い世代を中心に抗議活動が続いた。「グローバルサウス」のリーダーの一つであるインドネシアの民主主義の弱体化は、権威主義や反グローバリズムがはびこる国際社会にとっても大きな「傷」となるだろう。
ネパール紙は各世代で進む世代交代に注目
一方、きたる3月5日に選挙を控えるネパールでは、Z世代の若者たちが中心になって勝ち取った民主主義への歩みが試されている。ネパールの英字紙カトマンドゥポストは1月20日付の社説でこの話題をとりあげた。
社説によると、選挙に向けて候補者擁立の準備が進む各政党内で、保守的な選挙区に若い世代の候補者が擁立されたり、30年以上も連続して国会議員を務めてきたベテラン議員が引退を決めたりといった形で世代交代が実現しているという。「変化を求める国民に誤ったメッセージを送らないことが各政党に求められている」と社説は指摘する。
「3月5日の選挙は単なる形式的な手続きではない。Z世代運動の精神が制度として定着できるかどうかの試金石となる。国民が投票に臨む今、世代交代の要請はもはやスローガンではなく、政治的な現実となりつつある。有権者は今、ネパール政治の新たな時代を告げるために有望な新顔たちを支援することを確実にする必要がある」。批判の言葉ではなく、変革を担う覚悟がにじむ力強い言葉に、ネパールが歴史的な変化の時にあることが感じられる。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2026/01/23/in-institutions-we-trust.html
ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2026/01/20/a-young-dawn












