インドネシア大統領選で勝利宣言したプラボウォ氏の資質をどう見るか
「親しみやすさ」で若者の支持を獲得した元国軍最高幹部

  • 2024/3/24

 インドネシアで2024年2月14日に投票が行われた大統領選挙で、ジョコ大統領の政策を引き継ぐプラボウォ国防相が事実上の勝利宣言をしました。正式な開票結果は3月中に発表される見込みだが、現地からの報道によると、非公式の集計では、すでに当選に必要な過半数の票を確保しているという(*編集部注:その後、3月20日に選挙管理委員会が開票結果を発表し、プラボウォ氏が6割近い得票率で初当選を果たしたと発表したものの、落選した2人の候補が選挙に不正があったとして23日までに憲法裁判所に異議を申し立てた)。

 インドネシアの大統領選には、プラボウォ氏のほか、前ジャカルタ州知事のアニス氏、前中部ジャワ州知事のガンジャル氏の計3人が立候補した。プラボウォ氏は72歳。スハルト元大統領の次女を妻とし、スハルト政権下では国軍の最高幹部として政権を支えた経歴がある。これまで2014年と2019年の大統領選に立候補したが、いずれもジョコ大統領に敗れていた。

 今回の大統領選で、プラボウォ氏はその経歴とは対照的な「親しみやすさ」を前面に出してアピール。ジョコ大統領の長男で、若いギブラン氏(36)を副大統領候補に据えて選挙運動を展開した結果、有権者の多くを占める若い世代の支持を獲得したという。

2024年2月14日、ジャカルタで支持者らに大統領選の勝利宣言をするプラボウォ・スビアント国防大臣(左)と、ジョコ現大統領の長男で副大統領候補のギブラン・ラカブミン・ラカ氏(右)。プラボウォ氏は「この勝利は全てのインドネシア人にとっての勝利だ」と述べた。 (2024年2月14日撮影)(c) ロイター/アフロ

ポピュリズムへの傾斜が招く経済危機

 インドネシアの英字紙ジャカルタポストは2月24日付で「プラボウォ氏の財政的な制約」と題した社説を掲載した。

 社説によると、プラボウォ氏は、年間6~7%の高い経済成長を維持する計画を掲げる。同時に国家財政法を改正し、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%に抑えるとする制限を解除しようとしている。社説は、プラボウォ氏が主張するように、赤字をGDPの最大6%まで拡大し、最大60%の政府債務比率を許容することができれば、「最終的には、学校給食の無償化などポピュリスト的な政策を含め、拡大した財政政策を実行できるかもしれない。だが、それは経済の安定に大きなリスクをもたらす」と指摘した。

 「より大きな支出が、より高い経済成長を生み出す原動力になるとしても、それが財政赤字の拡大を意味する限り、借入金や債務もより大きくなるのだ」。社説は、現ジョコ政権が任期の最後に作成する2025年度の国家予算案は、財政赤字2%前後の「慎重な財政運営」となると見ている。10月に就任するプラボウォ氏が、就任後に独自の経済路線をどこまで打ち出せるかは未知数だ。

元軍人の本能を抑えて民主的な中道路線を引き継げるか

 一方、シンガポールの英字紙ストレーツタイムズは、プラボウォ氏の勝利が確実になったことについて、2月20日付の社説で「忍耐力の勝利」だと評した。

 社説は、プラボウォ氏の勝利について、「元ライバル」であるジョコ大統領が「暗黙のうちに手を差し伸べたこと」によって大きく票を伸ばしたことが背景にある、と分析した。

 しかし社説は、プラボウォ氏についていくつかの懸念点を指摘する。1点目は、健康状態だ。プラボウォ氏はすでに70歳を超えているため、就任する前から「彼の次の大統領が誰になるか」が注目されているというのだ。2点目は、ジョコ政権の主要政策の継続性だ。ジョコ政権が掲げていたヌサンタラへの首都移転計画や鉱物資源の輸出制限などが今後も継続されるかどうかという行方も注目を集めているという。

 さらに社説は、ジョコ大統領が外交面で「近隣諸国との間に平和で安定した関係を築いた」と述べ、その中道路線を評価。そのうえで、プラボウォ氏に対して「軍国主義的な本能を抑えて規律を守り、民主的プロセスの核心である“自らと異なる意見を取り入れる”という姿勢が重要だ」と、釘を刺した。

 

(原文)

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2024/02/24/prabowos-fiscal-constraints.html

シンガポール:

https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/indonesia-readies-for-the-prabowo-era

関連記事

ランキング

  1. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  2. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
  3.  2023年10月にパレスチナの軍事組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛けて以来、イスラエル軍に…
  4.  軍事クーデター後のミャンマーで撮影されたドキュメンタリー映画『夜明けへの道』が、4月27日より全国…
  5. (c) 米屋こうじ バングラデシュの首都ダッカ郊外の街で迷い込んだ市場の風景。明るいライトで照…

ピックアップ記事

  1.  パレスチナ自治区を拠点とするイスラム組織ハマスが2023年10月にイスラエルを攻撃し、1200人以…
  2.  監督も俳優も、泣きながら撮影したに違いない作品である。内戦が続くミャンマー・カレンニー(カヤー)州…
  3. ミャンマーで国軍が与党・国民民主同盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー氏らを拘束し、「軍が国家の全…
ページ上部へ戻る