加速する気候危機を止めろ 悪戦苦闘の各国政府
プラゴミに煙害 政府主導の法整備で解決なるか

  • 2023/11/13

 地球上のあらゆる場所で、致命的な気象災害が続いている。気候変動に対する各国の危機感は、強まる一方だ。国連総会をはじめ、多国間の国際会議が相次いだ9月以降、各国首脳の協議の場面では、必ずと言っていいほど気候変動や環境保全に関する対応策や協力強化が盛り込まれる。アジア各国の社説でも、環境問題をとりあげた記事が多く見られた。

(c) Muntaka Chasant / wikimedia commons

ポリ袋禁止のはずが・・・苦悩するバングラデシュ

 バングラデシュの英字紙デイリースターは9月18日付の社説で、ベンガル湾におけるプラスチック汚染の話題をとり上げた。

 社説によると、ベンガル湾では大量に投棄されるプラスチックごみが海を汚染し、動植物に深刻な影響を与えているという。例えば、「バングラデシュ沿岸漁業強化局の調査によれば、漁師たちが海に投棄する非生分解性(微生物が分解できない)廃棄物は、年間約15トンに上る」と、社説は指摘する。さらに、別の調査でも、毎日、約22.77キログラムの非生分解性廃棄物が観光客や地元住民により廃棄されていることが明らかになっているという。社説は、「ベンガル湾は今後30~50年間で使いものにならなくなる可能性がある」という専門家の警告を引用し、その深刻さを強調した。

 実は、バングラデシュは2002年、世界で初めてポリ袋を禁止したが、実態はといえば前述の通りの状況だ。社説は「ポリ袋が禁止されて以降、政府が環境保護のために大胆な措置を講じていれば、このような状態に陥ることはなかった」と、嘆く。社説によれば、同国は2010年にも、エコ素材として知られる「ジュート包装」を、ポリ袋に代わる包装として促進する法律を採択したものの、ほとんど効果はなかったという。さらに2020年には、高等裁判所が政府に対し、翌2021年までに使い捨てプラスチック製品の使用禁止令を定めるよう命じたが、効果的な措置は実施されていない。

 社説は、「法律や取り組みを単なる言葉遊びで終わらせてはいけない」と、強く求めている。

繰り返される森林火災と煙害に無策のインドネシア

 インドネシアの英字紙ジャカルタポストが9月15日付の社説でとり上げたのは、気象変動による森林火災に関する話題だ。同国では今年、極端なエルニーニョ現象が年の後半まで続くとして、繰り返し警告が出されている。

 9月初めには、スマトラ島とカリマンタン島で森林火災と泥炭地火災が猛威を振るい、両島の主要都市が煙に覆われ、社説は「煙が国境を越えるのは時間の問題だ。シンガポールやマレーシアにも近いうちに広がるだろう」との見方を示した。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は2002年、越境する煙害に関する協定を結んだ。同協定には、加盟各国が立法や行政、その他必要な措置を講じて、煙害の被害拡大を抑えることが盛り込まれた。しかし社説は、「インドネシアはこれまで森林火災による煙害の周期的な発生源として非難されてきたにもかかわらず、煙害対策法をいまだに制定していない」と、批判する。社説は、企業や地域住民などによる国内のさまざまな取り組みに加え、政府が積極的に法整備を進めることが必要だと訴えている。

(原文)

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/bay-bengal-drowning-plastic-3421621

インドネシア:

https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/09/15/the-specter-of-forest-fires-and-haze.html

 

 

 

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