イスラエルがレバノンへの空爆を開始

  • 2024/10/1

 イスラエル軍は9月20日、隣国レバノンの首都ベイルートを空爆。これによってイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部2人を含む31人が亡くなり、60人以上が負傷した。ハマス・イスラエル戦争が始まって以来、イスラエルがヒズボラ軍指導部に対して攻撃を行ったのは今回が二度目で、中東地域が全面戦争に突入するとなる懸念が高まっている。

レバノン南部のアクビエ村で、イスラエル軍の空爆を受けた建物の瓦礫の上に立つ男たち(2024年9月24日撮影)(c) AP/アフロ

ヒズボラの幹部2人が死亡、通信システムへの侵害も
 イギリスのBBCは9月21日、イスラエルによるベイルート住宅地への空爆で、ヒズボラの精鋭部隊であるラドワンのイブラヒム・アキル司令官と、アフメド・ワヒビ司令官の2人の死亡が確認されたと報道した。この攻撃を受け、国連高官のローズマリー・ディカルロ氏は、「中東が現在、これまでの惨状をはるかに上回る紛争の危機に直面している」と警告した。
 一方、イスラエル国防軍(IDF)のダニエル・ハガリ報道官は声明を出し、「彼ら はベイルート南部のダヒヤ地区の中心にある住宅ビルの地下でレバノン市民に紛れて潜み、彼らを人間の盾として利用していた」と述べた。また、殺害された人物らについて、「ヒズボラがイスラエルに潜入し、罪のない民間人を殺害する『ガリラヤ征服』攻撃計画を練っていた」と付け加えた。
 さらにBBCによれば、9月22日の週の初めにレバノン全土で発生したポケベルとトランシーバーの連続爆発事件を受けて、現地では不安が高まっているという。ヒズボラとレバノン当局はこの爆発事件をイスラエルの仕業だと非難しており、イスラエル政府高官はコメントを発表していないものの、多くのアナリストはこの攻撃の背後にイスラエルがいると見ている。この爆発事件は前例のないセキュリティ侵害であり、イスラエルがヒズボラの通信システムに深く侵入していたことを示すものであったとBBCは伝えている。

攻撃の焦点がガザ地区からレバノン国境へ
 一方、レバノンに拠点を置くオンラインメディアのナハールネットは9月21日、今回の爆撃について、同国フィラス・アビアド保健相によると女性7人と子ども33人を含む31人が亡くなったうえ、68人が負傷し、うち15人が入院中であると発表した。これは、2006年夏に起きたイスラエル・ヒズボラ戦争以来、イスラエルによるベイルート南部郊外への空爆としては最悪のものとなった。
 イスラエル軍は、「この攻撃はヒズボラ幹部のイブラヒム・アキル司令官を標的にして実施したものであり、会議中だった彼とラドワン部隊のメンバー16人を狙い通り殺害した」と発表した。イブラヒム・アキル司令官は、1983年に起きた米国大使館の爆破事件で重要な役割を果たした人物であり、米国政府から700万ドルの懸賞金がかけられていた。
 2023年10月7日にハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエルが報復攻撃に出てガザ地区で戦争が勃発して以来、イスラエルとレバノンの国境を挟んだ戦闘はほぼ毎日繰り広げられてきた。イスラエル軍の攻撃の焦点はこれまでガザ地区であったが、ハマスが大幅に弱体化したことを受けてイスラエル北部に位置するレバノンとの国境地域へと移っているのだ。
 米国をはじめ、国際的な調停者たちは、ガザ地区での戦闘が地域全体を巻き込む全面戦争に発展するのを食い止めようと奔走している。

 

出典:
イギリス(BBC):
https://www.bbc.com/news/articles/c5y9wyy9pr2o

レバノン(ナハールネット):
https://www.naharnet.com/stories/en/308149-31-dead-68-hurt-as-hezbollah-says-2-commanders-and-14-fighters-killed-in-dahieh-strike

 

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