ハマスの襲撃を生き延びたイスラエル人女性の言葉に世界が共感
「恐怖心ではなく愛に基づき選択し、行動すれば世界は変わる」
- 2024/1/18
「プログラム」に誘導されないために
筆者がアルパーさんを知ったのは、中米・コスタリカに住むイスラエル人女性、アヤ・ナタンさんのSNSがきっかけだ。筆者も一時期、コスタリカで暮らしており、アヤさんとは家族ぐるみで親しくしていた。今回のアルパーさんの投稿も、アヤさんがシェアしているのが目に留まったのだ。アヤさん自身はアルパーさんと面識がなく、たまたまSNSで見かけて共感したのだという。イスラエル人であるアヤさんがガザの現状をどう見ているのか。
今回、改めてコスタリカに移住した理由を尋ねると、アヤさんは「議論を好むイスラエル人の圧力に耐えられなくなったためです」「イスラエルは、常に戦争と隣り合わせでした。国内には異なる民族が暮らし、信じる宗教も熱心さも異なるので、争いの火種が絶えません。だから私は祖国を出ることにしたのです」と答えた。イスラエルを出た彼女は、まずインドに向かったが、手持ちのお金が尽きたため日本に渡り、大阪でしばらくアクセサリー販売をしながら暮らした後、日本と同じように平和国家を掲げるコスタリカに移住したという。「今はコスタリカこそが私のいるべき場所だと感じています。イスラエルに戻るつもりはありません」
そんなアヤさんは、ガザの現状について、「多くのイスラエル人がガザの人々の苦しみに胸を痛めています。ネタニヤフ政権の方針に賛成していない人も少なくありません。人々は平和を求めているのです」と語る。実際、「Women Wage Peace」という団体のように、イスラエルとパレスチナの女性たちが共存に向けて対話を重ねる取り組みも見られるという。しかし、アヤさんは「こうした取り組みは、政府や軍需産業、武器商人によって妨害を受けているのです」と指摘し、「イスラエル人も、ガザに住むパレスチナ人も、どちらも武器商人たちによって苦しめられているのは同じです。どちらが悪い、と単純に白黒つけることはできません」と訴える。そして、次のように続けた。
「拡散されている情報を集め、想像することに意味はありません。政府や政治家の発信を鵜呑みにするのではなく、現実に起きていることを自ら調べ、知ろうとすることが必要です。それは簡単ではありません。私たちは、情報によって知らず知らずプログラムされているためです。それでも、世界を変えることは可能です。まず、自分自身を変えるのです。世界は【ひどい】ととらえることもできるし、【素敵だ】ととらえることもできるのです。それが可能だとアルパーさんが証明してくれました。彼女にできたことは、皆にできるはずです。認識の仕方次第で世界は変えられると信じています」
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アヤさんには、アルパーさんに通じる思想があると感じた。情報があふれる現在の社会において何を信じたら良いのかという問いに対し、二人とも期せずして「プログラム」という言葉を使った。二人が指摘する通り、私たちは目で見たものを鵜呑みにしているだけでは、いつの間にかより深い分断の方向へと誘導されてしまいかねない。
筆者も、「恐怖心ではなく、愛に基づいて選択肢、行動し続けること」を心掛け、「すべての生きとし生けるものの幸せ」を願いながら、これからも映画を通じて人々に認識の変化を働きかけるように努力し、一日も早い戦争の終結を実現させるために行動し続けたいとの思いを新たにしている。