ケニア社会に残る結婚持参金と交渉人
金額だけでなく感情まで扱う人々

  • 2021/10/20

尊敬され、頼られる存在
 自分が所属する民族のコミュニティーに良くも悪くも依存しながら生活しなければならない程度が強いケニア社会では、たとえ都市部で現代的な生活を送っているように見える者であっても、田舎の伝統的なコミュニティーと完全に関係性を断ち切ることはできない。そんなコミュニティーにおいて、結婚とは、一族から一人前の成人として迎え入れられるための重要な通過儀礼としての側面がある。
 ケニアでは、6カ月以上の同棲生活を過ごすと法的な結婚状態と認められる「カム・ウィー・ステイ」という制度があるため、仮に家族に反対されても、制止を振り切って駆け落ちし、同棲期間が6カ月以上続けば結婚することは可能だ。しかし、両親族との話し合いや持参金の譲渡といった一連の手続きを踏まなければ一人前と認められることはなく、親類縁者から補助をもらうこともできなければ、遺産を相続することもできない。花嫁の父親が怒り心頭に発する場合も多いだろう。
 単に、愛する二人が共に連れ合うということ以上に、さまざまな要因や意味が複雑に絡み合うケニアの結婚。中でも一番のネックと言われる持参金の問題を解決してくれる交渉人たちは、人々から尊敬され、頼られる存在だ。金額の交渉はもちろん極めて重要だが、彼らが扱っているのは、結婚に関わる人々の感情そのものだ。時として、たった一回のスピーチで心を動かし、相手をうなずかせることすら可能にする交渉人たちは、コミュニティーにとって必要不可欠な存在なのだ。
 結婚という人生の晴れの舞台を憂いなく過ごすために、一番の近道は腕の良い交渉人を探すことをお勧めしたい。怖い叔父や義父に目をつけられ、話がこじれてしまう前に。

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