気候変動が脅かす「当たり前の暮らし」 学ぶ権利、きれいな空気
フィリピン紙とインドネシア紙が問う、教育と健康を守るための備え
- 2026/9/16
記録的な暑さや豪雨、長引く乾期や山火事――。気候変動の影響は、世界各地で人々の日常に及んでいる。
フィリピンでは、豪雨や熱帯低気圧による休校が相次ぎ、子どもたちの学習機会が失われている。一方、インドネシアでは、長期化する乾期のなかで山火事が猛威を振るい、深刻な大気汚染による健康被害も広がる。
子どもたちが安心して学び、人々がきれいな空気を吸う――。そんな「当たり前の暮らし」をどう守るのか。フィリピン紙とインドネシア紙の社説から考える。
相次ぐ休校 気候変動から「学ぶ権利」をどう守る
フィリピンの英字紙デイリーインクワイアラーは、8月23日付の社説「Climate-resilient learning system(気候変動に強い学習システム)」で、気候変動が子どもたちの教育に与える影響について論じた。
社説によると、フィリピンでは豪雨などによって学校の対面授業がたびたび中止されている。8月19日だけでも、豪雨と熱帯低気圧の影響で、15地域9000校を超える公立学校が対面授業を休止したという。
こうした影響は一時的なものではない。社説によると、年間平均で40~50日分もの授業日数が失われ、「小学4年生の算数と理科の成績を12~14%低下させた」という。
そこでフィリピン教育省は、都市や自治体全体で休校措置が出されていても、対面授業を再開するかどうかを各学校が判断できるようにする新しい方針を提案している。一律に休校するのではなく、地域の状況に応じて柔軟に対応し、授業日数を確保しようという狙いだ。
社説は、こうした措置に一定の理解を示しつつも、実際には「それほど簡単なことではない」と指摘する。学校自体が避難所として使われている場合など、対面授業を速やかに再開することが難しいケースもあるからだ。
社説がもう一つの選択肢として挙げるのが、自宅で学習できる教材の配布だ。新型コロナウイルスの流行時に採用された方式で、授業を実施できない状況でも、子どもの学習をできるだけ途切れさせないための方法だという。
しかし、社説が本当に必要だと訴えるのは、こうした応急的な対応だけではない。「教室が災害に耐えられるように建設され、学校にオンライン学習を支える適切な技術が備わっていれば、そもそも学習の遅れが生じることはないはずだ」と指摘。気候災害のなかでも教育を続けられるインフラへの投資を訴えている。
「きれいな空気は待てない」 広がる健康被害
一方、インドネシアの英字紙ジャカルタポストの8月22日付の社説「Clean air can’t wait(きれいな空気は待てない)」で、大気汚染によって広がる健康被害について論じた。
社説によると、長期化する乾期にスマトラ島やカリマンタン島で激しい山火事が発生。全国の急性呼吸器感染症の症例は約1560万件に上り、前年同期から約20万件増加したという。
ただ、患者は山火事が発生した地域以外にも、ジャカルタや西ジャワなどにも広がっている。このため社説は、森林火災による煙だけが呼吸器疾患の唯一の原因ではない、と指摘。自動車の排気ガスや工場、発電所からの排出など、複数の要因が大気汚染を深刻化させていると指摘する。
気候変動を原因を受ける山火事や洪水などの災害に加え、都市部では日常的な大気汚染も人々の健康を脅かしている。
社説は、「きれいな空気を吸うためだけに、市民が何年にもわたって訴訟を起こしたり、街頭でデモをしたり、指導者に請願したりしなければならない状況を厳しく批判する。
「欠けているのは、政治的意志だ。さらに何百万人もの人々が健康を犠牲にする前に、政府は法的な義務を果たすべき」だと強く訴えている。
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フィリピン紙が求めるのは、災害が起きても子どもたちの学びを止めない教育インフラへの投資だ。一方、インドネシア紙は、市民の健康を守るために大気汚染への対策を先送りしないよう、政府に迫る。
気候変動への対応というと、温室効果ガスの削減など大きな政策目標に目が向きがちだ。しかし、その影響はすでに、学校に通えるか、安心して空気を吸えるかという日々の暮らしに及んでいる。二つの社説が問いかけるのは、変わりゆく気候のなかでも、人々の「当たり前の暮らし」を守るための備えをどこまで具体的に進められるかということだ。
(原文)
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/193960/climate-resilient-learning-system
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2026/08/22/clean-air-cant-wait













