From Editor(2026年9月)
Newsletter vol.67

  • 2026/9/15

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 出張がない時は、両親の写真の前に季節の花を生けることにしています。時々立ち寄る近所の花屋の店主とは、いつしか「久しぶりだね、今度はどこに行ってきたの」「今の季節はどんな感じ?」などと立ち話をするのが恒例になっていました。

 その息子さんが、この春、大学を休学して世界を旅しに出かけたと聞いていたのですが、お盆の時期に奥様にお会いした際、「いつもいろんな国の話を聞かせてくれるあなたが、若いうちに世界を見るのはきっといい経験になると言ってくれたと聞いて、思い切って息子を送り出せました」と、思いがけずお礼を言われました。そんな大層なことを言ったつもりはなかったので驚きましたが、何気なく交わしていた旅や出張の話が、誰かが世界へ踏み出す小さな後押しになっていたのなら、こんなに嬉しいことはありません。

 この数カ月、花を買いに行くたびに、店主が「昨日、連絡があったよ」「今、○○にいるんだって」と息子さんの近況を教えてくれ、つい先日は「もうすぐ帰ってくるって」と、嬉しそうに話してくれました。

 世界のあちこちを自分の足で歩き、さまざまな人と出会い、見たことのない景色を心に刻んだ彼が、どんなふうにたくましくなって帰ってくるのか、そしてそんな息子をご両親がどう迎えるのか、私もひそかに楽しみにしています。

 おりしも今年は、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件から25年の節目の年です。あの日を境に世界は大きく変わり、その後も戦争やテロ、人道危機が繰り返されてきました。四半世紀が経った今も、互いの違いを理解し、受け入れ合える世界に近づいているとは、残念ながら言えません。

 世界を半年間旅したからといって、すべてを理解できるわけではないし、争いがなくなるわけでもありません。それでも、知らない土地を訪ね、そこで暮らす人に出会い、自分とは異なる価値観や日常に触れることは、「遠い国の知らない誰か」を、少しだけ身近な存在に変えてくれるのではないでしょうか。

 世界を恐れるのではなく、知ろうとすること。違いを遠ざけるのではなく、その向こう側にいる一人一人の暮らしを想像してみること。そんな小さな積み重ねを、これからも大切にしたいと思います。彼が無事に帰ってきたら、今度は私が、彼やご両親から旅の話を聞かせてもらう番です。

 次に花屋に行くのを楽しみにしながら、今月もドットワールドに届いた世界各地からの記事をご紹介します。

「社会を読み解く」の新着記事(2026年6月11日~2026年9月15日)

中国・ネパール国境の氷河土石流が問う「一帯一路」 (ジャーナリスト 福島香織氏執筆)

アメリカの援助削減をアフリカはどう見ているのか (在米ジャーナリスト 岩田太郎氏執筆)

ロヒンギャを見つめた9年 「伝えて」と託された声を小説に (ドットワールド編集長 玉懸光枝執筆)

ペトロ人民元構想で資源チェーンの再構築を目論む中国(ジャーナリスト 福島香織氏執筆)

「私の経験そのもの」欧州のロヒンギャが語る映画『LOST LAND/ロストランド』(ドイツ在住エディター 駒林歩美氏執筆)

『LOST LAND/ロストランド』が公開 遠い場所の物語はなぜ私たちに届くのか(ドットワールド編集長 玉懸光枝執筆)

ASEAN外交に見る中国・王毅外相の本当の狙い (ジャーナリスト 福島香織氏執筆)

アメリカ政治の新たな争点となるAI (在米ジャーナリスト 岩田太郎氏執筆)

コロンビア紛争地が見つめる政権交代(フォトジャーナリスト 柴田大輔氏執筆)

バングラデシュ ダッカ・テロ事件から10年  ホーリー・アルチザン襲撃事件が問いかける、暴力を生む社会の構造  (立教大学准教授 日下部尚徳氏執筆)

アメリカとイラン戦争の陰で進む「一帯一路」の新局面 (ジャーナリスト 福島香織氏執筆)

ヤンゴンからシリアへ 遠い国を知る入り口 (ドットワールド編集長 玉懸光枝執筆)

報道写真に映し出された「苦難」と「人間の強さ」(ドイツ在住エディター 駒林歩美氏執筆)

「世界写真館」の新着写真(2026年6月11日~2026年9月15日)

溶けゆくヒマラヤの氷河と、そこで生きるシェルパの人々(ネパール)(写真家 川口敏彦氏撮影)

【Pray for Myanmar】ゴッティ橋の厳しい警備(写真家 小池隆氏撮影)

「死の鉄道」のいつもの朝(タイ)(写真作家  吉永陽一氏撮影)

【Pray for Myanmar】祈る夢の実現(写真家  亀山仁氏撮影)

行楽列車(インド)(写真家 米屋こうじ氏撮影)

太陽の祭を歩くリャマたち(ペルー)(写真家  松井章氏撮影)

「報道を読む」の新着記事(2026年6月11日~2026年9月15日)

EV時代にどう参入するフィリピンとパキスタンが挑む「国産化」

(パキスタン・Dawn紙 2026年8月20日付社説、フィリピン・Daily Inquirer紙 2026年8月5日付社説より)

ネパールで大規模な土石流 繰り返される災害にどう備える

(ネパール・Kathmandu Post紙 2026年8月26日付社説、8月27日付社説、およびバングラデシュ・Daily Star紙 2026年8月27日付社説より)

終わらぬ戦争  「老人が語り、若者が死ぬ」

(パキスタン・Dawn紙 2026年8月26日付社説、およびインド・Timews of India紙 2026年8月16日付社説より)

相次ぐ銃犯罪 タイとバングラデシュで問われる社会のひずみ

(タイ・Khaosod紙 2026年8月13日付評論、およびバングラデシュ・Daily Star紙 2026年8月21日付社説より)

ネット社会で若者をどう守る 問われる規制と「発信する責任」

(ネパール・Kathmandu Post紙 2026年7月24日付社説、およびマレーシア・New Straits Times紙 2026年7月13日付社説より)

ASEAN復帰を探るミャンマー 問われる「対話」の条件

(タイ・Bangkok Post紙 2026年8月5日付社説、インドネシア・Jakarta Post紙 2026年8月7日付社説より

「ゴキブリ人民党」に集う若者たち インド政府に突きつけた不満

(インド・Times of India紙 2026年7月22日付社説と、The Hindu紙 2026年7月23日付社説、およびパキスタン・Dawn紙 2026年7月23日付社説より)

ミャンマー軍との「対話」をめぐり揺れるASEAN外交

(インドネシア・Jakarta Post紙 2026年7月17日付社説、ミャンマー・Irrawaddy紙 2026年7月16日付社説より)

「眠らないリーダー」は理想か インド紙が高市首相に投げかけた問い

(インド・Times of India紙 2026年7月22日付記事、および7月24日付社説より)

世界人口デー、人数の増減を超えた視点を

(パキスタン・Dawn紙 2026年7月11日付社説、バングラデシュ・Daily Star紙 2026年7月11日付社説より)

泥沼化する対イラン戦争 南アジアからアメリカに注がれる二つの視線
(インド・Times of India紙 2026年7月18日付社説、パキスタン・Dawn紙 2026年7月19日付社説より)

病院はあっても医療は届かない 問われる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」
(ネパール・Kathmandu Post紙 2026年6月8日付社説、およびバングラデシュ・Daily Star紙 2026年6月23日付社説より)

人口ボーナスに支えられる新興国で社会に出られない若者たち
(インドネシア・Jakarta Post紙 2026年6月10日付社説、フィリピン・Daily Inquirer紙 2026年6月8日付社説より)

中国をにらみ東南アジアで広がる外交の選択肢
(フィリピン・Daily Inquirer紙 2026年6月3日付社説、ベトナム・Vietnam News紙 2026年6月3日付社説より)

「署名」だけでは終わらない イラン停戦を支えるものとは

(パキスタン・Dawn紙 2026年6月28日付社説、インド・Times of India紙 2026年6月28日付社説より)

気候変動を巡って危機意識を募らせるアジア

(マレーシア・New Straits Times紙 2026年5月18日付社説、バングラデシュ・Daily Star紙 2026年5月24日付社説より)

長引く燃料の価格高騰と供給不足が市民を直撃

(スリランカ・Daily News紙 2026年5月27日付社説、ネパール・Kathmandu Post紙 2026年5月11日付社説より)

ワールドカップの熱戦から 問われるサッカーの普遍性とブランド

(インドネシア・Jakarta Post紙 2026年6月20日付社説、インド・Times of India紙 2026年6月17日付社説より)

二大大国のスーパーパワーの限界が露呈 多極化の時代の始まりか
(インド・Times of India紙 2026年5月26日付社説、インドネシア・Jakarta Post紙 2026年5月17日付社説より)

イラン戦争 世界が注視する「合意」を南アジアはどう報じたか
(パキスタン・Daun紙 2026年6月15日付社説、バングラデシュ・Daily Star紙 2026年6月15日付社説、およびインド・Times of India紙 2026年6月15日付社説より)

米中首脳会談で浮き彫りになった構造的な変化とは
(インド・Times of India紙 2026年5月16日付社説、パキスタン・Dawn紙 2026年5月17日付社説より)

「月刊ドットワールドTV」の新着記事(2026年6月11日~2026年9月15日)

月刊ドットワールドTV #24 振り返り  伝えるとは何か ロヒンギャを見つめた9年 (ドットワールド編集長 玉懸光枝執筆)

月刊ドットワールドTV #23 振り返り ダッカ・テロ事件から10年 問い続ける理由 (ドットワールド編集長 玉懸光枝執筆)

「月刊ドットワールドTV」#22 米中と中ロ、二つの首脳会談と中国の狙い (ドットワールド編集長 玉懸光枝執筆)

 

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