ネパールで大規模な土石流 繰り返される災害にどう備える
温暖化するヒマラヤ ネパール紙とバングラデシュ紙が訴える「国境を越えた備え」

  • 2026/9/4

 ネパールと中国にまたがる地域で8月26日、大規模な土石流が発生し、多くの人が犠牲になった。被害の全容や土石流が発生した原因はまだ明らかになっていないが、氷河の崩壊が岩石や土砂を巻き込みながら下流を襲ったとの見方も出ている。

 ヒマラヤ地域では近年、氷河湖の決壊や地すべりなどによる災害が繰り返され、そのリスクは地球温暖化によってさらに高まっている。ネパール紙は、早期警報システムの整備と国境を越えた情報共有を求める。一方、隣国バングラデシュ紙は、ネパールの悲しみは「私たち自身の悲しみでもある」として、地域全体で災害に備える必要性を訴えた。

 国境を越えて広がる気候災害に、どう備えるのか。二紙の社説から考える。

鉄砲水により息子のアユシュ・カドカさんを亡くし、親族に慰められているムナ・カドカさん(中央)(2026年8月31日、ネパール・チトワンの火葬場で)(c) AP/アフロ

高まる氷河湖決壊のリスク「早期警報システムの強化を」

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストは、被災後、連日のように社説でこの問題をとりあげている。

 8月26日夜に掲載された社説「Strengthen early-warning systems, fix cross-border information sharing(早期警報システムを強化し、国境を越えた情報共有を改善せよ)」は、今回被災した地域で3年連続で同様の災害が起きていると指摘。原因は氷河湖の決壊や、チベット側で発生した地すべりだという。

 ネパールには3252カ所の氷河と、2323カ所の氷河湖がある。1977年以降、26件の氷河湖決壊が記録されており、そのうち11件は国境を越えた影響をもたらしている。社説は、「地球温暖化により決壊のリスクがさらに高まっており、チベット自治区で25カ所、ネパールで21カ所、インドで1カ所の氷河湖が危険だと指摘されているという。

 こうした状況を踏まえ、社説は危険が指摘されている地域への早期警報システムの導入と、国境を越えた情報共有を通じたネパール国内の体制強化を訴える。

 さらに、その責任を脆弱な国々だけに負わせるべきではないと強調。地球温暖化に寄与してきた国々もまた、ネパールのような脆弱な国が災害に備え、対応するために必要な技術やインフラ、能力を構築できるよう支援する責任を負っている、と訴えた。

 また、翌27日付けの社説「Don’t let flood victims face the tragedy alone(洪水の被災者に悲劇を一人で背負わせるな)」は、被災した地域の惨状と人々の深い悲しみを伝えている。

 「洪水は、人、動物、家屋、学校、水力発電施設、橋、警備所、道路など、その進路にあるあらゆるものを押し流した。かつて活気に満ち、緑豊かな川岸は荒涼とした光景に変わり、破壊された家屋の残骸と遺体が露わになっている。多くの人々が愛する人を失い、行方不明者の消息を待ち続けている」

 一方、ソーシャルメディアで拡散されている一部の動画について、被災者への配慮を欠いた撮影や、誤情報・デマの拡散を厳しく批判した。災害時に求められるのは、悲劇を「撮る」ことではなく、被災者を助け、尊厳を守ることだという問題提起だ。

ネパールの悲しみは「私たちの悲しみ」

 同じ南アジアのバングラデシュの英字紙デイリースターも、8月27日付の社説「Nepal’s grief is ours too(ネパールの悲しみは私たちの悲しみでもある)」で、ネパールの被災は「私たち自身の悲しみでもある」として、早期警報システムや地域共通のシステムの構築を訴えた。

 社説は、「ネパールの災害は、広い意味において、すべての人々の災害でもある」と述べる。ネパールを繰り返し襲う同様の災害は、「氷河湖や不安定な斜面が災害の原因となりつつあるヒマラヤ地域の温暖化が、人々にどのような犠牲を強いているかを示している」からだ。

 とりわけ印象的なのが、近隣国の連帯についての力強い指摘だ。

 「山岳地帯を水源とする河川システムを共有し、気候の極端な現象に対して根本的な脆弱性を抱える隣国間の連帯は、単なる感情論ではない。それは、正しく理解された国益そのものである」

 当面の急務は、被災者の救助と支援だ。そのうえで社説は、「地域の近隣国が協力して氷河の監視や早期警報システム、避難インフラへの投資を急ぐ必要がある」と訴えている。

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 ネパール紙が求めるのは、災害を繰り返さないための早期警報システムと、国境を越えた情報共有だ。バングラデシュ紙もまた、ヒマラヤ地域の国々が協力し、氷河の監視や防災インフラへの投資を進める必要性を訴える。

 氷河や河川、そして気候変動の影響は、国境線で止まってはくれない。二つの社説に共通するのは、国境を越える災害には、備えと責任もまた国境を越える必要があるという視点だ。

 

(原文)

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2026/08/26/strengthen-early-warning-systems-fix-cross-border-information-sharing?utm_source=chatgpt.com

https://kathmandupost.com/editorial/2026/08/27/don-t-let-flood-victims-face-the-tragedy-alone

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/nepals-grief-ours-too-4257956

 

 

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