在日大使館を離れたミャンマー外交官の600日 
支えてくれる仲間たちとともに人権弾圧が続く祖国を思う

  • 2023/1/24

投げ打ったキャリアへの思い

 アウンソーモー氏は、CDMに参加したことで、軍傘下のミャンマー外務省からは解任されたが、日本政府は同氏が日本に滞在することを認め、2021年7月に外交官ビザを発給した。1年後の2022年7月に更新も認められたため、同氏は現在、ビザを所有しているという。

軍傘下のミャンマー外務省から解任されたが、 日本政府からは外交官ビザを発給されているという(筆者撮影)

 外交官ビザは日本での就労が認められていないため、働くことができない同氏には収入もないが、ある在日ミャンマー人団体が、同氏のためにアパートの契約や生活費などを支援してくれているという。アウンソーモー氏は、「彼らは私に“謝礼金”を支払っていると言うのです。私はそうやって彼らに支えられています」と、感謝にあふれた表情で語った。

アパートは在日ミャンマー人の仲間たちから支援を受けている(筆者撮影)

 軍の傘下となった在日ミャンマー大使館を離れて600日以上が経過した今、アウンソーモー氏は、ミャンマーの民主化が実現して再び外交官の職に戻ることを切に願っている。

東京都豊島区池袋にあるNUGのオフィスに向かって歩くアウンソーモー氏(筆者撮影)

 外務省に入省し、定年退職するまで働こうと決意した当時のことを振り返りながら、「私の父親も外交官だった。父親に憧れて同じ道を歩もうと志した私にとって、外交官はとても大切な仕事だ」と微笑んだアウンソーモー氏。瞳に希望の色をたたえて「愛する外交管の仕事に戻りたい。一等書記官としてもう一度、人生をやり直すことができれば満足だ」と語った後、力強い口調でこう続けた。

 「2023年こそ、皆と一緒に民主化を実現できることを期待している」

NUGオフィスで取材に答えるアウンソーモー氏(筆者撮影)

 

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