バイデン米大統領の来日を受け在日ミャンマー人が集会
国営石油ガス公社への制裁や民主化支援などを要望

  • 2022/5/23

 ジョー・バイデン米大統領が来日した5月22日、在日ミャンマー人らが在日米国大使館(東京都港区)の前に集まり、軍による市民の弾圧が続く祖国の窮状を訴えた。バイデン大統領は岸田文雄首相と初の本格的な首脳会談に臨むほか、中国の台頭を念頭に、日米とオーストラリア、インドでつくる戦略対話「Quad(クアッド)」の首脳会談などに出席するため、24日まで滞在する。

米国の民間企業シェブロンがMOGEへの資金を断つよう求める在日ミャンマー人ら(筆者撮影)

 梅雨入り目前の蒸し暑さが広がったこの日、厳重な警戒態勢が敷かれた在日米国大使館の近くでは、午後3時ごろから1時間にわたり在日ミャンマー人ら約100人の声が響いた。

アメリカ政府に祖国の窮状を訴える在日ミャンマー人の男性(筆者撮影)

 彼らが要求したのは、ミャンマー軍傘下の国営石油ガス公社(MOGE)に対する制裁の実施だ。米企業のシェブロンは、フランス企業のトタルとともにMOGEとのガス合弁事業を展開していたが、配当金の支払いが軍に流れて資金源になっているとして、国際社会からの批判が高まっていた。同社はトタルとともに支払いを止める措置をとり、今年1月にはミャンマーからの撤退を表明したものの、その後、MOGEとの関係がすでに完全に断たれたかどうか明らかではない。

クーデターへの抗議の意思を示す三本の指を立て、MOGEに対する経済制裁を求める在日ミャンマー人たち(筆者撮影)

 この集会を企画した一人、ウィンアウンさん(仮名)(36 )は「米国は、昨年2月1日にクーデターを起こしたミャンマー軍を公式に批判し、経済制裁を課したり、民主派の支援を表明したりしてくれている」と評価した上で、「米国はミャンマー軍の資金源となっているMOGEにはもっと制裁を課し、圧力をかけてほしい」と要望した。また、メーダジャンさん(通称)(31)も、「時間が経てば経つほど、祖国の人々の生命が奪われていく。バイデン大統領には、ミャンマーの情勢の解決にもっと力を注いでほしい」と熱く訴えた。

アメリカ政府に祖国の救済を求める在日ミャンマー人の女性(筆者撮影)

 人々はこの日、バイデン大統領をはじめ米国政府に対して「ミャンマー軍とシェブロン社の関係を完全に断ってほしい」「民主化を支援ほしい」「MOGEに対してより厳しい制裁を課してほしい」など、計5点を要望。これらをまとめた英語の要望書も同日付けで大使館宛てに郵送された。

来日中のバイデン米大統領に対して祖国の窮状を訴え、軍傘下のMOGEへの制裁強化を求める在日ミャンマー人ら(筆者撮影)

 

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