ウクライナ侵攻、巻き込まれたくない国々の事情
パワーゲームの狭間で、翻弄されるアジア諸国

  • 2023/3/22

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって2月24日で1年が経った。事態の打開策が見えない中、戦争は、当事国だけでなく、世界各地の人々の暮らしに甚大な影響を及ぼし続けている。

(c) Michael Mücke / Pexels

ロシアのエネルギーに依存するパキスタンの複雑な心中
 パキスタンの英字紙ドーンは2月26日、「ウクライナ侵攻から1年」という社説を掲載した。
 社説は現状をこのように説明する。「紛争は膠着状態に陥り、双方とも一歩も引こうとせず、常にエスカレートする脅威を孕んでいる。この戦争は事実上、大西洋条約機構(NATO)および欧州連合(EU)とロシアを対立させているため、西側諸国はこの戦争を民主主義とファシズムの闘いだと位置付けている」。
 しかし、事態はもっと複雑だ、と社説は指摘する。ロシアの行為は正当化できないが、この対立構図は何年も前からくすぶっており、ウクライナはそのきっかけに過ぎない、というのだ。 
 そのうえで社説は、戦況の見通しについて、「互いに妥協する気配はほとんどなく、双方とも最後まで戦い抜く決意を固めているようだ」とみる。さらにその他の国に目を転じ、現状を分析しながら、「直接の当事者であるロシアと西側諸国を別にすれば、戦争に巻き込まれることに意欲的な国はあまりない」と言う。
 社説はこの点について詳述していないが、パキスタンの複雑な立場を反映した意見のように思われる。西側諸国がロシアへの経済制裁を続ける中、パキスタンはロシアが建設するガスパイプライン計画を決定している。最近では、割安になったロシア産原油の購入を検討していることも報じられた。パキスタンは、国内経済が悪化し、エネルギー需給もひっ迫し、国民生活への影響も出ている。背に腹は代えられない国内事情を抱え、パワーゲームに否応なく巻き込まれていく現状に対する複雑な思いが滲んだ社説と言えよう。

バングラデシュの罪なき市民にも甚大な影響

 バングラデシュの英字紙デイリースターも、2月24日付紙面で「エゴによる戦争が続く」と題した社説を掲載した。

 社説はまず、ロシアによるウクライナ侵攻を強い言葉で非難する。
 「この1年で戦争は第二次世界大戦後最悪の戦禍をもたらした。世界中で紛争と緊張をふくれ上がらせたロシアのウクライナ侵攻を、今、改めて非難する」
 その批判の刃は、自らにも向けられる。「侵攻自体は1年前に始まったが、この紛争は10年以上も前から始まっていたものだ。にも関わらず、ここまでエスカレートすることを許してしまったのは、私たちが平和を最優先に考えることを怠ってきたからだ」。そして、西側諸国に対しても、「対話を促すこともせず暴力の永続性に拍車をかけている」と、その対応に苦言を呈した。
 社説は、この戦争がバングラデシュを含む多くの国の市民にも甚大な影響を与えている、と指摘する。具体的には、「経済が新型コロナの感染拡大から回復しようとしていた矢先に、さらに何百万人もの人々を壊滅的な生活水準にまで落としめたのだ」と、途上国からの視点を示したうえで、「これ以上、罪のない市民が被害を受ける前に、この戦争を平和的に終結させる要求をしなくてはならない。国際社会はどちらかに傾くのではなく、解決に向けて努力せねばならないのだ」と主張した。


(原文):
バングラデシュ:https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/war-egos-continues-devastate-3255481

パキスタン:https://www.dawn.com/news/1739205/ukraine-anniversary

 

関連記事

 

ランキング

  1.  タリバンがアフガニスタンで再び政権を掌握してから、今年8月で丸5年。その節目に…
  2. (c) 柴田大輔 ニカラグアで、独裁化する政府に抗議する人々が命を落としている。ギジェルミナさ…
  3.  ネパールと中国の国境沿いで8月26日、大規模な鉄砲水と土石流が発生しました。原因の一つとして指摘さ…
  4.  2026年8月、ネパール中部を大規模な土石流が襲いました。ヒマラヤでは気候変動に伴う氷河の融解…
  5.  2026年8月26日、中国とネパールの国境地帯を大規模な氷河土石流が襲いました。気候変動による…

ピックアップ記事

  1.  2026年8月、ネパール中部を大規模な土石流が襲いました。ヒマラヤでは気候変動に伴う氷河の融解…
  2.  2017年8月25日、ミャンマー西部ラカイン州でロヒンギャの武装勢力が国境警察施設を襲撃したことを…
  3.  ミャンマー西部ラカイン州に多く暮らす少数派イスラム教徒ロヒンギャ。長年にわたり市民権を認められ…
  4.  2016年7月1日にバングラデシュの首都ダッカで発生したホーリー・アーティザン・ベーカリー襲撃テロ…
  5.  2016年7月1日夜、バングラデシュの首都ダッカで、日本人7人を含む多くの命が奪われたホーリー…
ページ上部へ戻る