フィリピンで日本人射殺事件が発生 「安全」課題が浮き彫りに
犯罪統計の減少の裏で狙われる人々 人身売買被害も後を絶たず
- 2025/9/9
フィリピンの首都マニラで8月15日、日本人男性2人が拳銃で撃たれて殺害された。地元警察は、ツアーガイドをしていたと見られる50代と60代の男を容疑者として拘束。さらに、現場から逃げた別の容疑者の行方を追っている。報道によると、容疑者の一人は「日本人の首謀者から900万ペソ(2300万円)の報酬で殺害を依頼された」と話しているという。
観光キャンペーンよりも安全対策を
フィリピンの英字紙フィリピン・デイリーインクワイアラーは、8月26日付の社説でこの問題をとりあげた。
「観光業にはイメージが重要だ。しかし、残念ながら現在、海外に発信されているフィリピンのイメージは、白い砂浜やあたたかく友好的な人々ではなく、真っ昼間に強盗に遭ったり、マニラ首都圏の路上で冷酷に銃撃されたりする観光客の姿である」
フィリピンで被害に遭っているのは日本人だけではない。社説によると、今年5月には首都マニラの中心部で、外国人が多く暮らす高級住宅地があるボニファシオ・グローバルシティで韓国人2人が銃を突きつけられ、高級バッグを奪われたという。
社説は、国家警察が今年5月、過去半年間で殺人、強姦、強盗などの重大犯罪が23%減少したと「自賛」している、と指摘。「しかし、警察の目が最も行き届いているはずの首都圏で、観光客が犯罪者に狙われるという報道が相次ぐなか、こうした成果は影を潜めるに違いない」「『三流の法執行』で名を馳せる観光地に誰が注目するだろうか」と、現状を手厳しく批判した。
そのうえで社説は、観光産業のキャンペーンに取り組む政府に「どんなブランディングキャンペーンや観光スローガンも、こうした状況下では効果を発揮しないだろう」と苦言を呈し、こう訴える。
「観光業が経済成長の強力な牽引役であり続けるために、マルコス政権は、ある明白な事実を認識しなければならない。安全こそ、最も重要かつ不可欠な広告形態なのだ」
詐欺拠点にとって格好のターゲット
もう一つ、フィリピンの法執行の甘さが指摘されているのが、人身売買の問題だ。フィリピンの海外就労者数は世界有数で、国民の10人に1人が海外で働いているとも言われている。彼らが送金する外貨は国家経済を支えており、海外就労者は「英雄」と呼ばれるほどだ。
しかし、海外就労の多さは国内雇用の少なさの裏返しでもある。仕事を求めて海外渡航を希望する人はあとを絶たず、そこにつけ込むブローカーや不正組織などによる「人身売買」が大きな社会問題になっている。
フィリピンの英字紙インクワイアラーは、8月24日付の社説で海外就労にまつわる人身売買の被害について取り上げた。
社説は、「より良い収入や生活を期待して人身売買の被害に遭い、東南アジア諸国にある詐欺拠点で働かされている人々は数百人以上に上る」と案じる。2025年だけでも、主にカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイから695人の人身売買の被害者が、政府によって本国に送還された。なかでも今年3月にはミャンマーから2回に分けて206人が救出された。被害者らによると、彼らは当初、ソーシャルメディアを通じてタイのコールセンターの電話対応係やマーケティング担当者として採用されたが、その後、ミャンマー東部のミャワディにある詐欺拠点に送り込まれたという。社説は、「フィリピン人が仕事を求めて海外に出国し続けるのは、国内に適切な雇用がないからだ」としたうえで、「フィリピン人は、英語能力に加え、この絶望的な状況と貧困から、詐欺拠点にとって格好のターゲットと見なされている」と、指摘する。
さらに社説は、人身売買を完全に防ぐことが難しい理由として、「フィリピンのぜい弱な国境管理」を挙げる。とはいえ、単に国境管理を強化するだけでは、対策は不十分だ。「政府が人身売買を行う不正組織の背後にあるシンジケートを追跡し、摘発すべきだ」と、社説は訴えている。
(原文)
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/185616/ph-tourism-at-gunpoint
https://opinion.inquirer.net/185578/saving-filipinos-from-scam-hubs













