紅海危機で中国の一帯一路戦略はどう転ぶのか
グローバルサプライチェーンの再構築で明らかになる真の勝者とは

  • 2024/1/10

復活の好機か、息の根を止める危機か

 こうした状況を踏まえ、中国のネットメディア「雪球」では2023年12月26日、次のような論評が掲載された。以下、引用する。

 「中国という偉大な国家は、ある種の魔力を有しており、国際社会がいかに動揺しても、国内庶民は平和と安定を維持することができる」

 「中国も30年前には紅海危機を経験し、貨物船が米国から停船を要求され、検査を受けるなど、大きな屈辱も受けた。これはひとえに、当時のわが国に国力がなかったからだ」

 「現在は、数えきれないほど多くの中国貨物船が紅海ルートを航行しており、我々が停船を拒否すれば、誰にも行く手を阻まれることはない。たとえ世界的な大手海運企業が国際情勢の不安定化を受けてことごとく紅海ルートを迂回しても、恐れる必要はない」

 「先人たちが流した血と汗のおかげで、中国経済は今、自信に満ちており、我々と子孫を明るい月のように包み込んでいる。紅海を封鎖することで真に勝利する者がいないとしても、今回の事態は幸運にもわが国にとって、国家が強大であることがいかに重要であるか、改めて認識させてくれる機会となった」

フーシ派に拿捕された商業船ギャラクシー・リーダー号を見学後、はしごを降りる人々(イエメンのアルサリフ沖で2023年12月5日撮影)(c) ロイター/アフロ

 紅海危機の中、イランとの緊密な関係や、ロシアとの協力で進む北方航路の開発、そして中欧列班の好調は、いずれも確かに中国にとって有利な形で進んでいる。しかし、中国の独り勝ちかと問われれば、単純にそうとも言えない。紅海ルートは、中国製のアパレルや玩具、EV、電子部品などを欧州市場に輸送するための主要航路だ。新華社によれば、世界的な大手コンテナ船社のマースク社が運航する極東から欧州に至る9本の貨物航路のうち、8本は中国が起点だという。さらに、世界で用いられているマースク社のコンテナの3本に1本が中国から出荷されており、6本に1本が逆に中国に向けて出荷されている。つまり、紅海危機によって中国の製品を欧州市場に輸出するコストが大幅に上昇すれば、中国企業の売り上げにも打撃を与え、中国人の生活物価を直撃することになる。

 浙江省のある窓枠製造企業は、紅海ルートから喜望峰ルートへと振り替えたことにより輸送コストが跳ね上がったため、その分、価格を下げてほしいと取引先から求められたという。同社の担当者は、「ビジネスを維持するため、要求に応えて価格を1.5%下げるつもりだが、純利益の20%を損失することになり、まったくもってとばっちりだ」と嘆く。また、浙江省・義烏の国際商会も、メディアの取材に応じ、「義烏から欧州市場までの2023年12月のコンテナ価格は、11月の3倍に跳ね上がったうえ、コンテナスペースが確保できるかどうかはっきりしない状況だ」と語っている。

 紅海ルートの封鎖による影響を総括すれば、欧州経済への影響は相対的に最も大きく、中国のエネルギー輸送分野に対する直接的な影響は、比較的小さい。しかし、中国経済もすでにグローバルな経済チェーンと一体化していることから、まったく影響を受けずにすむわけではない。紅海危機が長期化すればするほど、中国経済もマイナスの影響を受けることになる。

 とはいえ、国際社会の枠組みを再編するという、中国の長期的な地政学上の戦略から見ると、紅海危機によって暴かれたグローバルサプライチェーンの弱点を再構築するプロセスで、中国がロシアやイランと緊密な関係を背景に主導権を握ろうとする可能性は十分に考えられる。これからの展開次第で、真の勝者が決まることになる。

 

 

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