3期目に臨む習金平外交の行方
米中の関係修復は実現するか

  • 2022/12/14

 米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は11月14日、主要20カ国首脳会議(G20サミット)が開かれたインドネシアのバリ島で約3時間にわたって会談した。英BBC放送などによると「関係修復を意図した会談」となり、バイデン大統領は「中国と新たな冷戦になることはない」と、述べたという。

中国の習近平国家主席と米国のジョーバイデン大統領は11月14日、インドネシア・バリで会談した(2022年11月14日インドネシア・バリで撮影) (c)新華社/アフロ

シンガポール「バリ島会談の勢いを止めるな」

 シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズは米中首脳の直接会談について、11月21日付の社説で「歓迎する」と、評価した。
 「米国と中国の首脳が前回、互いに握手を交わしてから3年もの年月が流れた。長過ぎた。新型コロナの感染拡大があったとはいえ、両大国の首脳はそれぞれ国家戦略として対立姿勢にあった。米国は、民主主義と権威主義という二項対立の枠組みが作られたと言い、中国は、影響力の低下した米国が中国の影響力拡大を阻もうとしている、と言う。どちらも実に単純で役に立たない主張だ」
 そのうえで社説は、両者の会談について「もし互いの関係を見直すことにつながったのであれば、良いものだった」との見方を示す。実際、両国首脳は対話のチャンネルを復活させることに積極的であり、ブリンケン国務長官が中国を訪問することでも合意したという。
その背景にそれぞれの政治事情があった、と社説は指摘する。米国では、11月8日に行われた米中間選挙で民主党が予想以上に善戦し、中国では10月に行われた第20回中国共産党大会で習氏が異例の3期目の続投を決めた。
 「強さを増した指導者たちは、互いに寛容だろうか? そう願いたいものだし、そうなるべき理由はある。米中の貿易額は2021年に7200億ドルに上った。今後、トランプ大統領時代に引き上げられた関税が是正されれば、この額はさらに増えるだろう」
 社説はまた、米中首脳が良好な関係にあることは、両国関係のみならず、国際社会全体にも影響するものだ、と指摘する。
 「米中両国が協力すれば、温室効果ガスの排出量削減をはじめとする気候変動対策のうえでも大きな変化が起きるだろう。新型コロナウイルスの感染拡大についても、もし米中両国が互いの科学技術力を持ち寄っていたら、人類はこれほど苦しまずにすんだかもしれない」
 そのうえで社説は、米共和党の下院議員が国会議員団を率いて台湾を訪問すると発言していることにも触れ、「こうした行動は、バイデン政権がせっかく切り開いた対話の道を閉ざすことにつながり、不幸なことだと言わざるを得ない。バリ島会談での勢いが阻まれることはあってはならない」と、主張した。

対中関係の強化を訴えるネパール

 一方、ネパールの英字紙カトマンドゥポストには11月16日、「中国との関係強化を進めよ」と訴える社説が掲載された。
 その前日の11月15日、ネパールと中国は、ネパール国内の開発プロジェクトに中国が150億ネパール・ルピー(約159億円)を支援することで合意した。中国は2019年、習近平国家主席がネパールを訪問した際にも、580億ネパール・ルピーに上る開発援助を約束したが、プロジェクトの選定と実施が遅れているという。
 こうした中国の積極的な援助を、社説は「わが国のためにぜひとも必要」だと歓迎し、次のように述べる。
 「中国からの支援を受けることで、インドへの行き過ぎた依存を是正することにもつながる。新型コロナ感染拡大に伴う行動制限が緩和された今こそ、中国とネパールが関係をより深める絶好の機会である。ネパール政権がどの政党になろうとも、ネパールと中国の間の関係構築は最優先事項であり、なおざりにしてはならない」
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 バリ島でのG20サミットをはじめ、東南アジア諸国で開かれた一連の国際会議を終えて帰国した習近平氏には、ゼロコロナ政策に対する国民の抗議行動という難題が待ち受けていた。バリ島会談での緊張緩和ムードが、内政問題の影響を受けて変化するのかどうか。習近平指導部は、3期目の大きな試練に直面している。

 

(原文)
シンガポール:
https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/xi-biden-talks-a-welcome-development

ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2022/11/16/starting-anew-with-china

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